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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第五章―夜会とお披露目―#4
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う聞こえなくなっていた。

 今はレド様だけを見て、ダンスに意識を集中していればいい─────


※※※


 ホールの端に控える楽団が緩やかに音楽を奏で始め、ルガレドとリゼラが滑るように踊り出す。

 ルガレドもリゼラも、たった2日間練習しただけとは思えない動きだ。(がく)()に乗った滑らかなその動作は優美で、二人の息も合っていて────まるで舞踊(ぶよう)のようで、目で追わずにいられない。

 シェリアは、内心誇らしい気持ちで、その光景を眺めていた。

 リゼラは、本人に自覚がないが、本当に目を惹く。今日は着飾っているので尚更だ。

 派手な装飾こそが特権階級の象徴で美しさだと本気で信じている連中ですら、リゼラの姿に釘付けになっている。

 それに、先程のリゼラの辞儀(カーテシー)やこのダンスを見れば、イルノラド公爵夫人とファミラが流した噂は虚言だと、気づく者は気づくだろう。

(あらあら、人前であんな形相を曝すなんて…)

 上座である壇上を見遣れば、ファミラが顔を醜く歪めて、ルガレドと────というよりリゼラを睨んでいるのが見て取れる。

 ジェミナ皇妃の方は、思惑が外れて、ただ面白くなさそうな表情だ。

 そして、ジェスレム皇子はといえば────リゼラに見惚れているようだった。リゼラのことを食い入るように見つめている。

(これは…、少しまずいかもしれないわね)

 単純なジェスレムは、女性は派手に着飾っているのが美しいと思っている。

 契約の儀のときはドレスではなかったからその目には映らなかったようだが、今日のリゼラは派手ではないものの、誰が見ても美しく装っている。

 だが、たとえジェスレムがリゼラを欲したとしても、ジェミナ皇妃は許しはしないはずだ。

 皇妃は、ジェスレムの望むままにさせているのではなく、ただ自分の権力の象徴として、許容範囲で好きにさせているだけなのだ。

 先程の、ルガレドとリゼラの婚約発表────あれは、おそらく皇妃の思い付きに違いない。

 シェリアに相談がなかったことから、リゼラは何も知らされていなかったのだろう。イルノラド公爵側も知らなかった可能性が高い。

 ルガレドを貶めるために、皇妃が独断で決めたことなのではないかと思う。あの皇妃がそれを覆してまで、ジェスレムの我が儘を通すとは思えない。


 シェリアが考え事をしているうちに、曲が終わり、ルガレドとリゼラもダンスを終えた。

 瞬間、拍手が起こったが、すぐにジェミナ皇妃の存在を思い出したのだろう。拍手は、ぱらぱらと、分解するように消えていった。

 壇上に戻ったルガレドとリゼラに、進行役の侍従が近づく。侍従がルガレドに何か告げると、ルガレドとリ
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