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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第五章―夜会とお披露目―#4
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頃、慌てて練習しているのかもしれませんよ」
「うふふふ。あの野獣の子も粗野でダンスはあまり得意ではなさそうだもの。二人してみっともない姿を晒さなければ良いのだけれど」

 三人は、本当に楽しくて仕方がないという風に笑っている。歪んだその笑顔は醜くて、吐き気がする。

 私が両手を握り締めていると、レド様が私の右手を自分の左手で包んでくれた。

 レド様の少し冷たいその手は何だか温かくて────澱んでしまった心が浄化されるような気がして、涙が出そうになった。


 しばらくして、レド様の異母弟である第三皇子ゼアルム=ラス・オ・レーウェンエルダが、自身の親衛騎士、ゲルリオル伯爵令嬢を伴って現れた。

 ゲルリオル伯爵家はゼアルム皇子殿下の母君の生家で、親衛騎士である令嬢は従姉に当たる。

 ゼアルム皇子殿下は、レド様よりも少し濃い紫色の双眸だけは目立つものの、顔立ちは特に醜くも整ってもいない───癖のある茶髪をした普通の青年だ。年齢は、今年で二十歳になる。

 動きや体つきを見ると、おそらく武芸はあまりされない。

 柔和な雰囲気を醸してはいるが────私には、何処か油断できない人物に映った。



 その後、皇王陛下が現れ、皇王陛下のことを観察する間もなく、侍従によって大ホールに移動するよう告げられた。

 私とレド様は、最後列に並ぶと、こっそり【認識妨害(ジャミング)】を解除した。

 結果的に今回の実験は成功だったと言える。嫌な思いはしたが、直接罵声を浴びせられたり、言葉を交わすよりはましだ。

 レド様のエスコートは私を労わるように、優しかった。

 あれしきのことで────あんな()(ごと)で取り乱してしまうなんて、本当に情けない…。

 レド様を護るためにも、もっとしっかりしなくては。本番はこれからなのだから─────


◇◇◇


「本日はご足労いただき、誠にありがとうございます。これより、皇王陛下の名の下に夜会を開催いたします。今宵は新成人を祝うためのものとなっております。新成人の方々は勿論、全ての方が楽しんでいただけますよう───」

 契約の儀でも進行役を務めていたあの侍従が、口上を始めた。

 開催の口上は、皇王陛下がされるのがこれまでの定例だったらしい。

 だけど、ジェミナ皇妃一派の悪行に、皇王陛下は全てを諦めて無気力になり、いつからか侍従がするようになったと聞いている。

「そして────先日、第四皇子ジェスレム殿下と、第二皇子ルガレド殿下がご成人なされました。契約の儀を終えられ、親衛騎士を選ばれましたことをここに報告させていただきます。
まずは、第四皇子ジェスレム殿下の親衛騎士となられた、イルノラド公爵公女ファミラ様────
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