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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第四章―ロウェルダ公爵邸にて―#5
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としての役目を投げ捨てるつもりはなかった、ということ?自分の命がかかっていたとしても…?)

 自分の命のためには逃げないのに、リゼラのためなら逃げる────

(それほどまでに、リゼを失いたくないんだ……)

 ラナは、リゼラをその逃亡生活に巻き込まないで欲しいと思っていた。

 リゼラが幾ら凄腕の冒険者だとしても、追われる生活など心が疲弊してしまうだろう、と考えていた。

 だけど────

(ああ、リゼはこの人に任せれば、きっと大丈夫だ────)

 ラナは、何故かそう確信した。

 何だか笑い出しそうになるのを堪え───ラナは口を開く。

「殿下、そのお言葉、決してお忘れになりませんよう。もし、違えたら許しませんから」

 ルガレドにはそう告げたが、ルガレドが言葉を違えることはおそらくないだろう。


◇◇◇


「ラナったら、無茶をするわね」

 リゼラが街から戻ってルガレドと皇城に帰った後、ラナはシェリアに誘われ、応接間でお茶を飲んでいた。立場上許されないことだと思うが、いつもシェリアに押し切られてしまう。

「ロドムさんから、お聞きになったんですね」

 あの時、ロドムはラナの無礼を止める素振りも見せなかった。よく止めなかったな、と思う。

「まあ、ラナの気持ちはよく解るわ。わたくしだって、リゼには不幸になって欲しくないもの」

 リゼラに助けられたことがあるのは、シェリアも同じだ。

 ラナは詳しくは知らないが、その立場や美貌から、シェリアは何度も誘拐されかけ、殺されそうになったことさえあるらしい。

 そんな窮地を幾度もリゼラに助けられたというシェリアのリゼラへの思い入れは───はっきり言って、ラナより強いように感じる。


「ただ…、殿下のお気持ちも解るのよね。身近なご家族を亡くされ、忠義を持った使用人たちも取り上げられて、孤立した環境の中、そこにリゼが現れて────そうしたら、もう…、リゼがいなくなることは耐えられないでしょうね」

 その気持ちは、ラナにも解る気がした。

 ラナはずっと自分を無償で助けてくれる人などいないと思っていた。それが“家族がいない”ということなのだと、教えられずとも知っていた。

 だけど、リゼラは見返りなど考えず、ただラナを助けてくれた。あのとき、これが誰かに“愛される”ということかもしれないとラナは思った。

 孤児院にいた頃も、リゼラが自分を慕ってくれているのは知っていた。でも、きっと理解はしていなかったように思う。

 これが、“家族がいる”ということ────リゼラは、自分を『家族』だと思ってくれている。

 その考えに至ったとき、ラナは、物心ついた頃から付きまとっていた心細さが消えるのを感じ
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