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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第四章―ロウェルダ公爵邸にて―#5
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すぐにまた顔を上げて、強い眼でルガレドを見る。

「わたしは、リゼをとても大事に思っています。不幸になって欲しくない。
殿下が、リゼを大事にしてくれようとしていることも、見ていて解ります。ですが…、殿下のお立場は不安定です。もし、殿下が追い落とされるようなことがあれば、リゼを…、どうか道連れにせず、手放してあげて欲しいのです」
「…っ」

 ラナの言葉に、ルガレドは殴られた時のような衝撃を覚える。

(リゼを手放す…?)

 三日前までは───リゼラに実際に会うまでは、ラナが言った通りのことを確かに考えていた。

 自分が皇子としての立場を追われるようなことが起こった場合は、親衛騎士となった者は解放してやらねば、と。

「……だが、リゼはきっと承知しない…」

 出てきたのは、そんな言い訳のような言葉だった。

 実際、そんなことになったとしても、リゼラはルガレドを見捨てようとしないだろう。

「リゼなら…、そうでしょう。ですから、殿下の方から突き放してあげて欲しいのです」

(リゼを…、突き放す────)

 初めてリゼラを目にしたとき、その姿に見惚れ────その輝きに目を奪われた。

 がっかりしたくなくて期待を押し(とど)めて、不安を抱いて対面したルガレドに、リゼラは微笑んでくれた。

 きっと────あの瞬間には、ルガレドはもう完全に恋に落ちていた。

 護ってくれなくてもいい。リゼラが隣にいてその笑みを向けてくれれば、それだけでルガレドは幸せだ。

(手放したくない────手放せるわけがない…)

 ふと、リゼラが自分の許を離れ、別の男に寄り添うところが思い浮かぶ。

(嫌だ…。他の男になど、やりたくない。それだけは嫌だ。そんなことになるくらいなら、俺は────)

「そうなったら…、もしそんな状況に陥ったら、俺は…、リゼを連れて逃げる。皇子としての立場を捨てることになったとしても構わない────」


※※※


「皇子として失格かもしれない。お前たち民からすれば、皇子という役割を全うせず逃げるなど、腹立たしいかもしれない。だが、俺は…、国よりも、民よりも───リゼの方が大事だ。どんなに(そし)りを受けたとしても、リゼを失うことだけは絶対に嫌だ…」
 
 まるで絞り出すように言葉を紡ぐルガレドに、ラナは眼を瞬かせた。

 ラナとしては、皇妃一派に追い落とされ、ルガレドが国を追われる状況になったら、という前提で話しているつもりだった。

 皇妃一派に追い詰められ逃げ出したとしても、きっと国民は(なじ)ったりしない。誰だって、命が惜しいに決まっている。ルガレドが命惜しさに逃げ出しても、誰も責めはしないだろう。

(この方は、それでも皇子
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