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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第四章―ロウェルダ公爵邸にて―#5
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がわたしを止めたがっていたのは解っていましたが、わたしはその話を受けました。
働き始めて、わたしはすぐに後悔する破目になりました。有名なだけあって、仕事は次から次へと舞い込み、わたしたち従業員は、ろくに食事もさせてもらえず、ろくに眠ることも許されず、ただひたすら服を作らされ続けました。
マドラはデザイナーなどとは名ばかりで、デザインすら、わたしたちがしていました。お客様にデザインを気に入ってもらえなかったときは、罰まで与えられました。
従業員はみんな、わたしと同じような境遇でした。粗雑に扱っても文句を言う家族はいないし、いなくなっても探されない。そんな者たちばかりでした。
就職するとき、魔術で契約をしていたので、逃げ出すことも出来なくて…。正直、このまま一生使い潰されて終わるかもしれないと思っていました。
でも────リゼだけがわたしの状況に気づいてくれたんです。
孤児院で家族同然に過ごしても、大半は就職したら音信不通になります。わたしもそんな一人に思われてもおかしくなかったのに、リゼは、連絡がとれなくなったわたしを心配して、わざわざ情報屋に調べてもらったんだそうです。情報屋を雇うにはかなりお金がかかるのに─────」

 ラナはそれを聞いた時のことを思い出したのか、口元に微笑を浮かべる。

「リゼは、マドラがいない時を見計らって、アトリエに忍び込んできました。わたしたちに、持ってきた食べ物を食べさせてくれた後、すぐに何とかするから少しだけ我慢して欲しいと言いました。
それから何日くらい経った頃でしょうか。どうやったのか、デルサマルが捕まり、それに連座してマドラが捕まり、わたしたちは解放されたのです。
そんなことをやってのけたのに、お礼を言ったわたしたちに、リゼは、伝手を総動員しただけで自分はほとんど何もしていないから、と笑っていました」

 ルガレドは、リゼラらしいと誇らしく思う反面────リゼラのその優しさが向けられるのは自分だけではなかったことに、落胆せずにいられなかった。

「その2年間の無理が祟ったわたしは、身体を壊して、しばらく何も出来ませんでした。リゼは小さな部屋を借りてくれ、わたしをそこに住まわせて、面倒を見てくれました。リゼは『荷物を置いておける拠点が欲しかったから』なんて言っていたけれど、わたしのためだということは明らかでした。
そして、少しずつ回復してきたわたしに、リゼは服作りを依頼してくれるようになりました。懇意にしている商人に繋ぎをとってくれて、古着や材料の仕入れ先を確保してくれたり、客になりそうな人たちを紹介してくれたり…、わたしが、フリーのお針子としてやっていけるようになったのは───いえ、今生きていられるのは、すべてリゼのおかげなのです…」

 ラナは噛みしめるようにそう言って顔を伏せたが
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