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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第三章―ファルリエムを継ぐ者―#4
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、左眼は潰れていなかったということですか?」
「傷がついて、映像を捉えることが出来なくなったのは確かだ。だが、人の性根が見えてしまうのは変わらなかった。眼帯をしていても見えてしまうから、夜会やら式典に出るのは本当に苦痛だったな。皇妃たちは、俺が夜会や行事にあまり呼ばれないことを悔しがっていると思っていたようだが」

「ですが、今見た限りでは、眼球に傷がついているようには見えませんでしたが…」
「ああ。おそらく、古代魔術帝国の魔術のせいなのだろうな。俺も先程、着替えるときになって気づいたんだ。左眼が治っていることに」
「え、それならば、見え過ぎるようになっているのでは────」
「それが、この眼帯に、神眼の力を抑える仕組みが施されているらしい。この眼帯のおかげで、今は魔力や空中に漂う魔素などがぼんやり映る程度で、人の性根は意識しなければ見えなくなったようだ」
「そうですか…。それなら、良かったです」

 他人の性根など、見ても楽しいものではない。安堵して私が呟くと、レド様は表情を緩めた。

「神眼についてはもう潰れたものと思われていることもあって、俺の神託共々、皇妃の顰蹙(ひんしゅく)を買うのを恐れて、もう誰も口にしない」

 それで、噂でも聞いたことがなかったのか。

「神眼が回復したことは、誰にも知られない方が良さそうですね」
「ああ。そのつもりだ」
「解りました。私も誰にも漏らさないようにします。ネロにも口止めしておきますね」
「ああ、頼む」


◇◇◇


 レド様が話を終えて、私たちはどちらからともなく、お茶を口に含んだ。

「…美味しいな。これは、リゼが持ち込んだものか?」
「はい。高級なものではないのですが、この味が好きで、よく購入しているんです」

 前世の祖母が淹れてくれた日本茶の味に似ていて、私にとっては懐かしい味だ。それに、後味が爽やかで、とても気に入っている。

「よろしければ、こちらのドライフルーツもどうぞ。私が作ったものなので、お口に合うか判らないですが…」
「リゼが?」
「ええ。以前、冒険者の仕事で滞在した村で、作り方を教わったんです」

 あの村のドライフルーツは、とても美味しかった。近くの森でとれる果物を使うので、季節によって使われる果物が違うのに、どの果実も、ちょうど良い甘さと硬さになっていて、本当に美味しいのだ。

 数が出来ないらしく、大抵村の中で消費してしまうため、他所(よそ)には出回らないようだ。

 皆にも食べさせたくて、私もまた味わいたくて、頼み込んで教わった。

「では、一つ、もらってもいいか?」

 どうぞ、と私は皿を差し出す。

「…程よく甘くて美味しいな」

 レド様が気を使ってそう言ってくれたわけではなさそ
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