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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第三章―ファルリエムを継ぐ者―#1
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「そうか…、あの時に……」
「はい。あの状況では、見捨てて行ってもおかしくはなかったのに───ファルリエム辺境伯は私たちを助けてくださったんです」
一度だけ逢った、大柄で厳つい顔をしたファルリエム辺境伯が思い浮かぶ。長身痩躯で端正な顔立ちのレド様とは似ても似つかない。
それでも────どこか重なるところがあった。
「ファルリエム辺境伯は、私のことなど知りもしなかったでしょうし、別に恩を売るために私たちを助けてくださったわけではないでしょう。
私はあのまま、ただ平民の冒険者として生きていくことも出来た。でも───これも縁だと思ったんです」
私が普通にイルノラド公爵令嬢として生きていたのなら、ファルリエム辺境伯に救われる状況になど陥ることはなかったはずだ。
きっと───レド様の親衛騎士になることもなかった。
「不思議ですね…。何か一つでも違っていたら、私が今ここにいることはなかった」
「…本当にそうだな。イルノラド公爵家のリゼに対する仕打ちは許せないが、爺様がリゼを助けてくれたことも───リゼが今ここにいることも、感謝したい」
そう言って穏やかな笑みを浮かべたレド様に、私も笑みを返した────
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