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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第一章―契約の儀―#2
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る。


 契約の儀で授ける剣は、宝物庫から選ぶ。

 宝物庫は複数あり───ルガレドが持ち出す許可を得られたのは、そのうちの一ヵ所、グレードの低いものばかりが保管されている宝物庫のみだった。

 武を尊ぶ国なだけあって、剣は相当数保管されていたが、価値の低いものしか収納されていない中で選べるものなど高が知れていた。

 親衛騎士候補者が女性に変更されたと知り───少しでも気に入ってくれればと、柄も鞘も白を基調としていて、随所に(シルバー)があしらわれた細身の片手剣を選んだ。

 剣としては(なまく)らだが───女性が好みそうな優美なものだ。


 対して、ジェスレムが用意したのは、古代魔術帝国の遺跡から見つかったという業物の両手剣だ。一説では、使い手によっては炎を纏わせることが出来るという。

 柄は漆黒で、鞘は赤を基調としていて、全体に(ゴールド)の装飾が為されている。

 派手だし使い手を選ぶのではないかとルガレドは思ったが、もらう方は、剣士ならばジェスレムの携えた剣の方が嬉しいのかもしれない。

「ああ、でも、兄上の護衛騎士になるのは、我が儘で傲慢な剣も持ったことのない出来損ないなんだっけ。別にその剣でも構わないかもしれないな。何せ、剣の価値なんて判らないだろうからね。アハハハ」

 ジェスレムの言動は性根が滲み出ていて、本当に嫌な気分になる。


 ルガレドの親衛騎士になる人物のことは聞いていた。

 武門イルノラド公爵家の次女で、我が儘で傲慢だという。自分の思うような神託でなかったことに拗ね、16歳になるこの年まで、勉強も剣術の修行も社交も一切しなかったらしい。

 だが、ルガレドはその噂には懐疑的だった。

 何故なら、その噂を広めていたのが、イルノラド公爵家の長女───つまり本人の実の姉だったからだ。

 ルガレドは夜会でその現場を見たことがあるのだが、ジェスレムのような濁った靄を身に纏いながら、彼女は嬉々としてそれを言い触れ回っていた。

 そのときの彼女の表情は、ジェミナ皇妃やジェスレムがルガレドを貶めて愉しんでいる時の表情にそっくりだった。

 そもそも、普通なら、自家の醜聞を隠そうとするものではないだろうか。


 イルノラド公爵家の次女───リゼラは、もしかしたら、自分と同じような境遇に置かれているのかもしれない。

 そのせいで、公爵家から除籍されて、ルガレドの親衛騎士で()()()などという、損な役割を押し付けられてしまったのかもしれない。

 何にせよ───ルガレドはリゼラを出来る限り大切にしようと決めている。

 たとえ噂通りだったとしても────当の本人がルガレドを他の貴族同様に蔑視していようとも。

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