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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第一章―契約の儀―#2
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一度口を噤んだ。

「このお金は、リゼラ様への援助金として用意していたものです。詫びでも許しを請うためのものでもございません。何卒、ルガレド殿下の親衛騎士をする上で、役立てていただけませんか」

 袋を差し出されて、受け取っていいものかどうか躊躇(ためら)う。

 だけど、ルガレド殿下の置かれている状況を考え────心を決めた。

「………ルガレド殿下のために使わせていただきます」


※※※


 控室に通されたルガレド=セス・オ・レーウェンエルダは、一緒に成人の儀を受ける異母弟のジェスレムが、すでに居座っているのを見て、込み上げる嫌悪感を呑み込んだ。

 ジェスレムは一見すると金髪緑眼の美青年だが、ルガレドには性根の汚さだけが目につく。

 これは比喩などでなく───本当に、汚く濁った(もや)(まと)っているように見えるのだ。

 ルガレドの左眼は生まれつき、普通であれば目に見えないものも映してしまう。それは“神眼”と呼ばれるもので、人間が持つのは本当に珍しいことだった。

 それに加え、『英雄』などという神託を授かったために命を狙われる破目になり、7歳のとき襲撃されて左眼を(えぐ)られた。

 幸いなことに、それで左眼は潰れてしまったと世間では信じられている。

 確かに眼球に傷がつき映像は拾えなくなったが、眼帯をしていても、それを通り越して人の心根みたいなものを捉えてしまうのだ。


「やあ、兄上。今日は成人の儀だというのに、ずいぶん酷い格好だね」

 ニタニタと気持ち悪い笑みを浮かべ、ジェスレムが話しかけてきた。

 酷い格好をしているという自覚はある。

 だけど、どうしようもなかったのだ。成人の儀及び契約の儀を控え、そのための礼服を手配しようとしたけれど、用意出来ないと回答されただけだった。

 仕方なく、以前式典に出席させられたときの礼服を着用するしかなかったのだが、これがまた酷いものだった。

 礼服は多少の流行はあるものの基本的な型はそう変わらないので、支給されたその礼服も型自体は別段後ろ指を指されるようなものではないが、生地が見るからにぼろぼろに傷んでいるのだ。

 当時もさすがにこれはと思い、別のものを用意するよう依頼したが、ルガレドの予算に値するのはそれしかないと言われ断られたのだった。

「兄上も一応皇子の端くれなんだから、もっと皇族としての自覚を持った方がいいよ。そんな格好で、貴族たちの前に出るなんてみっともない」

 白々しくそう言って、ジェスレムは嘲笑う。

「しかも、その安っぽい剣。兄上の親衛騎士となる者は可哀そうだね」

 ルガレドが腰に提げている、契約の儀で授けるための剣を見て、ジェスレムは嘲りの笑みを深め
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