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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
第一章―契約の儀―#2
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公爵は私に向かって口を開きかけたが思い直したようで、側近の男に振り向いた。

「…頼んだぞ」

 側近が頷くと、公爵も馬車に乗り込んでいった。御者らしき使用人が馬車の扉を閉める。

 よかった。私は、公爵一家とは別の馬車に乗るようだ。

「それでは、リゼラ様、こちらへ」

 側近の男に促され馬車に乗ると、側近の男も続いて乗り込んできた。一緒に行くらしい。



「……リゼラ様」

 馬車が走り出し、黙って窓の外を眺めていると、側近の男が口を開いた。

「どうか、こちらをお受け取り下さい」

 モコモコに膨らんだ、高価な布地で出来た袋を渡される。

 中に入っているものは簡単に予想がつく。相当量のお金だ。

「何ですか───これ」

 思ったよりも冷たい声が出た。

「ご不快になるのは解ります。ですが───話を聞いていただけませんか」

「……」

「イルノラド公爵家はおそらく零落を免れない状況となりますので、このまま絶縁することがリゼラ様へのせめてもの詫びになると、旦那様は考えておられます。
本来なら、旦那様より謝罪をさせていただくのが筋ではございますが、リゼラ様はそんなことをされてもご不快になるだけだろうと存じますので、旦那様の自己満足のためだけに謝罪をすることはしたくないとの仰せです」

「……」

「旦那様には何も話すなと申しつけられておりますが、これだけは言わせていただきたいのです。
リゼラ様の神託についての旦那様の発言は、失言であったと私も思っております。ですが、旦那様は誓って、リゼラ様を冷遇するつもりも排斥するつもりもございませんでした。
今回の件も、最後まで迷っておられました。周囲に説得されてやっと決断したのです。旦那様は、リゼラ様が心を入れ替えてルガレド殿下に忠義を尽くされるようなら、援助なさるおつもりでした。
リゼラ様にしてみれば、虚言に惑わされたことこそがご不快だろうとは思いますが、旦那様がリゼラ様を疎んでいたわけではないのだということだけは、どうか知っておいていただきたいのです」

「……公爵閣下が私の排斥を指示したわけではないということは、この間の会話で解りました。国防に関わる公爵閣下が、忙しくてあまり邸に帰って来られなかったということも知っています。
でも───それでも…、気づいて欲しかった。10年もあったのに────」

 自分でも自覚がなかった本音が零れて、固く目を瞑る。

 イルノラド公爵家と縁を切ると決めた時、公爵の事情、夫人の生い立ち、すべて調べ上げた。こうなってしまった理由は何となく推測できる。

「それについては、私の落ち度でもあります。本当に…、申し訳ございません───」

 側近の男は、言ってから、はっとしたように
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