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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
序章―除籍と絶縁―#3
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がいる。

「ごめんね。何て言うか────ルガレド殿下のことは放っておけない気がして…」
「謝ることはないわ。それでこそリゼですもの。残念だけれどね」

 シェリアはそこで溜息を一つ()いて、湯気を立てるティーカップを優美に持ち上げ、お茶を一口含んだ。

「儀式で着る礼服を用意しないといけないわね」
「うん。それをシェリアに相談したいと思っていたの」
「1週間後ですもの、急がないと。───カエラ、至急使いを遣って、ラナを連れて来てちょうだい」
「かしこまりました」

 シェリア専属の侍女であるカエラさんが、すぐさま応接室を出て行った。


◇◇◇


「ラナ、よく来てくれたわ」
「お招きに(あずか)り、参上いたしました」

 ラナと呼ばれたこの女性は、フリーのお針子だ。

 実は───彼女は私が幼い頃助けられた孤児院の出身で、私にとっては姉のような存在だった。

 ちょっと痩せ気味だが、柔らかい栗色の髪と緑色の眼をした可愛らしい女性である。

「今日はどういったご用件で呼ばれたのでしょう?」
「実はね…」

 ラナ姉さんの質問に、私が答える。

 すると、私を妹分として可愛がってくれているラナ姉さんが、思わずといったように叫んだ。

「っ何よそれ!…っと、失礼いたしました」
「いいのよ、ラナ。その気持ち、わたくしも同じですもの」

 今年19歳になるラナ姉さんは、口調や立場は崩さないものの、シェリアと結構気が合うようで意気投合することが多い。

 シェリアもラナ姉さんを気に入っていて、それを許している。

 私すら置いてけぼりにされることもあるので、二人を引き合わせた身としては、時々寂しくなることもあるけど。

「それでね、礼服が必要なの」
「1週間しかないから、既製品を手直しするしかないのだけれど、その既製品を探す手間すら惜しいわ。今回は、シルムのものを使いましょう」

 シルムとは、14歳になるシェリアの弟だ。シェリアと同じ金髪金眼を持つ可愛らしい男の子で、私にも懐いてくれている。

「でも───」
「1着くらい大丈夫よ。シルムには、後で新しいものをあつらえればいいのだから。それより、一刻も惜しいわ。早速、試着に取り掛かりましょう」

 カエラさんの先導で、気持ち急ぎ足で、衣裳部屋へと向かう。

 “デパート”のワンフロアと錯覚するような衣裳部屋に私は一瞬気後れをして足を止めたが、シェリアはもう目星を付けているらしく、迷うことなく進んでいく。

「さて、と。わたくしは、これが良いと思うのだけれど」

 そう言ってシェリアが手にしたのは、深青色のコートだ。繊細なパイピングと刺繍が豪奢だが、派手さはなく上品な印象だ。

「それから、
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