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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
序章―除籍と絶縁―#2
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レム皇子と同時期にルガレド皇子を成人させることによって貶めようと、ジェミナ皇妃が思い立ったのが始まりだった。
二人の皇子の親衛騎士は、初めジェミナ皇妃が勝手に選んでいたが、これ以上事態を悪化させないために、ダズロとその同志たちが代替え案をジェミナ皇妃に認めさせたのだ。
それが、ファミラをジェスレム皇子の親衛騎士に、リゼラをルガレド皇子の親衛騎士にするという案だった。
皇妃は、自分の息子の親衛騎士に『剣姫』と神託を受けた公爵家の長女がなり、ルガレド皇子の親衛騎士に我が儘で傲慢と名高く除籍予定の公爵家の次女がなることに、大いに満足したらしい。
ダズロにしてみれば、それは苦肉の策だった。特にリゼラのことは、我が儘で傲慢だからといって実の娘を、除籍した上、将来性のないルガレド皇子の親衛騎士にしていいのか悩んだ。
ダズロと同じく国を憂う騎士仲間に、ルガレド皇子と辺境で苦労すればきっと心を入れ替える───そうしたら手を差し伸べてやればいいと説得されて、苦渋の末に決断したのだ。
そして───その苦悩した分だけ、一向に現れないリゼラに対するダズロの怒りは募った。
リゼラがやっと現れた時、頭に血が上っていたダズロは気づけなかったが、セロムはリゼラの様子に違和感を覚えた。
勉強も修行もしようとしないと聞いていたのに、彼女の出で立ちは確実に実戦を経験している戦士の様相だった。
黒く染められた
鞣革
(
なめしがわ
)
のジャケットにショートパンツ。やはり同じ素材の太腿の半ばまである編み上げのサイハイブーツ。腰には二重に黒いベルトを巻き、簡素な双剣を提げていた。
どの装備も使い込まれ、リゼラに馴染んでいるように見えた。
それに、執務室に入る瞬間の室内を検分するような鋭い視線、そして踏み入った時の足運びは、武道を修めた者でなければ出来ない。
何より、その表情は凪いでいて、レミラが報告するような浅慮さは見当たらず、逆に思慮深い印象を受けた。
(もっと早く気づけていたら───)
そもそも、リゼラが神託の内容に拗ねて勉強も修行も社交もしないと嘆きながら、10年間もそれを許していたレミラのおかしさに気づかなければならなかった。
いくら邸を空けていることが多くても、10年間もリゼラと全く会わないことのおかしさに気づかなければならなかったのだ。
セロムは、もう何度目かになるかわからない、深い後悔を
滲
(
にじ
)
ませた溜息を
吐
(
つ
)
いた。
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