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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
序章―除籍と絶縁―#2
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し終えた私は、まだ呆然としたままの公爵へと向き直る。

「公爵夫人と公子様、それに公女様に、私が、籍を外れてこの公爵家とは縁が切れたこと───それからSランカー冒険者であることを、公爵閣下の方からきちんと言い含めておいてくださいね」

 公爵夫人とはこの10年一度も会ってないけど、公子と公女の方は何度か遭遇していて、会う度に罵られた。

 私が平民になったと知ったら、調子に乗って益々うるさくなるに違いない。

「それでは、私はこれで。あ、一応言っておきます。6歳までの短い間ではございましたが、お世話になりました。どうぞ、お元気で」

 ちょっと嫌味だったかな。でも、いいか。

 私は一礼して、返事を待たずに部屋を出た。


※※※


 現イルノラド公爵家当主───ダズロ=アン・イルノラドの悄然とした状態を見て、彼の側近であるセロム=アン・ノラディスは溜息を()いた。

 セロムの主人であり、再従兄弟(はとこ)であり───親友であるダズロは、少々短気で短絡的なところはあるが、決して悪い人物ではない。

 家庭を顧みることができなかったのは、家族をないがしろにしていたのではなく、単純に忙しかったのだ。


 ジェミナ=アス・ル・レーウェンエルダが皇妃となってから───いや、ジェミナの祖父である先代ベイラリオ侯爵が台頭したことにより、この国は腐り始めた。

 ジェミナ皇妃は権力を笠にやりたい放題だ。生家であるベイラリオ侯爵家や侯爵家の取り巻きどもが、彼女の理不尽な要求を何でも叶えてしまう。
 
 皇国の守護たる騎士団も彼女の影響を免れず、ジェミナ皇妃が実力でなく自分の好悪で人事を動かすので、大分前から、国の防衛に支障を来たしているのだ。

 リゼラが神託を受けたときのことは、もちろんダズロの失言だとは思うが、ダズロはあの当時すでに国の行く末を憂いていて、焦りで心に余裕がなかった。

 さらに追い打ちをかけるように、国防の要であったファルリエム辺境伯が亡くなった上、辺境伯家が取り潰されたことにより、国防に大きな穴が開き、騎士団を一つ任されているダズロの負担はより大きくなってしまった。

 頻繁(ひんぱん)に邸へ帰ることが難しくなり、邸と子供たちのことはイルノラド公爵夫人であるレミラ=アス・ル・イルノラドに一任していたのだが────


(まさか、実の娘にこのような仕打ちをするとは??????)

 レミラは伯爵家の出だが、授かった神託が『一女』だったため、冷遇されて育ったという過去を持つ。

 『聖母』と神託を下された妹ばかりが可愛がられ、レミラは顧みられることはなかったそうだ。

 しかし、彼女は逆境を(かて)にマナーと教養を磨き上げ、社交界で名を()せた
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