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コントラクト・ガーディアン─Over the World─
第一部 皇都編
序章―除籍と絶縁―#1
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処遇についてだろう。
まあ───でも、丁度良かった。こちらも公爵に会わなければならない事情があるのだ。
「はぁ、憂鬱……」
私は、開いたままの扉から、廊下へと踏み出した。
◇◇◇
使用人棟へ閉じ込められ、邸内を自由に行き来することを禁じられていた私だけど、公爵の執務室の位置は知っている。
行き会う使用人たちが訝し気にこちらを見遣る視線が、本当に
鬱陶
(
うっとう
)
しい。
執務室へと辿り着き、その重厚な扉をノックする。
「入れ」
偉そうな応えに
踵
(
きびす
)
を返したくなったが、そうもいかないので、渋々、扉を開いた。
「…失礼します」
礼をするほど敬ってはいないものの、一応、そう言っておく。
「ようやく来たのか。何度も呼び出しているのに、来たくないなどと我が儘を言いおって。お前は何様のつもりだ」
「…公爵が呼んでいると、私は今日初めて聞きましたが?」
まあ、ここ2週間ほど、仕事で戻ってこなかったので、あのクズ男が閉じこもっているはずの私がいないと言えずに、そう言い逃れしたんだろうと思うけど。
「言い訳はいい。お前の我が儘に付き合っている暇はないんだ。
お前の成人後の進路が決まった。第二皇子であるルガレド殿下の親衛騎士だ」
第二皇子ルガレド=セス・オ・レーウェンエルダ────
御年24歳になるにも関わらず、現皇妃ジェミナ=アス・ル・レーウェンエルダの差し金で、未だ成人させてもらえず、皇宮で飼い殺しの憂き目に遭っているという。
民衆の間では悲劇の皇子と名高いが、権力を
恣
(
ほしいまま
)
にする皇妃に睨まれているため、貴族の間では蔑視されている。
ルガレド殿下のご生母セアラ側妃は辺境伯家のご令嬢で、血統は悪くはない。
しかし、セアラ側妃の生家ファルリエム辺境伯家は、辺境伯が8年前に国を守って命を落とされた後、跡取りが決まっていたはずなのに代替わりを邪魔され、後継不在として解体されてしまった。
つまり、ルガレド殿下には後ろ盾がいないのだ。
実母であるセアラ側妃も、殿下が7歳のとき襲撃された際に、殿下を守って亡くなっている。
さらには、殿下に仕えていた使用人たちもファルリエム辺境伯家が取り潰された際、皇妃により強引に解雇されてしまったらしく、ルガレド殿下は文字通り孤立しているらしい。
そのルガレド殿下の親衛騎士に────私が?
「ルガレド殿下には権力がない。もう、お前の我が儘は通らない。ルガレド殿下はおそらく辺境に駆り出される。勉強も武術の修行もしなかったお前は苦労することになるだろう。怠ったことを後悔して、自分の我が儘を反省することだな」
何を言っているんだろう、この男。
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