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ある程度の資質
第六章
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 彼はその場でも誰もが正座をしている中で胡坐をかいていてだった。
 話が終わるとその場で人がいるのにも服を脱ぎだし。
 自分の服を着てだ、示現に喪服を突き出して言った。
「返すわ」
「いや、返すって」
「葬式終わったからな」
 だからだというのだ。
「もうな」
「じゃあもう」
「帰るな」
 不貞腐れた様な顔でだった。
 彼は踵を返した、そしてその態度で葬式の場を後にしたが。
 示現はその背中を見てだ、一緒にいる妻に言った。
「これは二度とな」
「会わないわね」
「ああ、自分から出て行ったな」
「そうね」
「どうにもならなかったな」
「全くね」
「元がだ」
 人としてのそれがというのだ。
「本当にな」
「酷過ぎて」
「そんな人はな」
「救われないわね」
「もう駄目だ、わしも他の誰が何をしても」
「どうにも出来ないわね」
「誰かがいないと何も出来ない」 
 示現はそうした人のことも話した。
「そんな人は駄目だというが」
「それでも何か出来るわね」
「それだけのものがあるということだ」
 そうであってもというのだ。
「まだな、だが本当にどうしようもない」
「全く駄目な人は誰が何をしても駄目ね」
「御仏の道を話してもな」
「近付かないどころか文句ばかり言って」
「そして行いもだ」
 それもというのだ。
「あの通りだ」
「どうにもならないわね」
「救われるにもある程度のものが必要だ」
「それなりのものがね」
「資質がな、あの人にはなかった」
「そのある程度の資質が」
「それすらなくてはどうにならない」
 それこそというのだ。
「そしてだ」
「ああなるわね」
「そうだ、誰が何をして救われない」
「御仏ご自身でないと」
「そして御仏もそこまで酷いとな」
「その時は救われないわね」
「一度餓鬼道に堕ちるか」
 あまりにも卑しく浅ましい存在となるか、というのだ。
「若しくは地獄か」
「そうしたところに堕ちて」
「それから救われる」
「人界にいる間は救われないわね」
「御仏もな。御仏の慈愛は無限であられ」
 人とは比較にならないまでに大きいというのだ。
「まさに餓鬼でも地獄の亡者でも救われるが」
「もうあそこまでなると」
「人界では救われない」
「それだけの資質がないから」
「それすらも備わっていないからな」 
 だからだというのだ。
「あの人がそうだった、もう破門もしない」
「二度と私達の前にも出ないわね」
「親戚にも知り合いにもな。もう駄目だ」
 示現は菊枝に苦い顔のまま言った、そしてだった。
 実際に彼も菊枝も親戚も知り合いも二度とその人を見なかった、誰もが見放し相手にしなくなったからだ。そこからその人の行方は誰も知らない。


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