第五章
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「本当にな」
「それじゃあ」
「かなりだ」
「匙を投げようって思ったわね」
「ああ、今度何かあったらな」
その時はというと。
「どんなことでもな、わしもだ」
「匙を投げて」
「もううちの宗派では一切だ」
それこそというのだ。
「面倒を見ない」
「破門ね」
「それもだ」
「するのね」
「そうする」
こう言うのだった、そしてだった。
状況を見守った、その時は必ず来ると夫婦で思っていたがその時は程なくして来た。その叔父さんが脳梗塞を再発して倒れたのだ。
彼はその話を聞いたが。
「そうか」
「そうかって叔父さんなんだが」
示現は彼に言い返した。
「見舞いには行かないのかい?」
「忙しいんだよ」
「忙しいって」
仕事もしていないだろと言いそうになったが。
彼は止めた、もうここで決断したからだった。
それでその人の見舞いをした、親戚は心ある人は誰もが見舞いをしたが当然彼はせず結局叔父さんはなくなり。
示現は葬式に出た彼に喪服も用意したが。
「喪服を用意してもなの」
「一切だ」
葬式の用意の中でだ、示現は菊枝に話した。
「有り難うはなしだ」
「そうなのね」
「そしてあの通りだ」
「ふんぞり返っているわね」
「親戚や知り合いの人達が集まってな」
「皆かな死んでいるのに」
「平気な顔でだ」
悲しむことなぞ微塵もなくだ。
「ふんぞり返っている」
「そうね」
「もうな」
示現は項垂れて言った。
「終わりだな」
「お葬式終わったら」
「もう破門するか」
「そうするわね」
「親戚の人達にも話す」
「どうにもならないって」
「宗派でもな」
そちらでもというのだ。
「もうな」
「破門して縁を切る」
「そうするとな」
「そうね、もうね」
「どうにもならない」
こう言ってだ、示現はふんぞり返っているだけの彼を見て妻に話した。本当に葬式が終われば破門すると決めていた。
だがそこで終わりでなくだ、葬式の後の食事の場で。
「・・・・・・・・・」
「何あれ」
「見ての通りだ」
これまでで最も苦い顔でだ、示現は妻に食事の場で言った。
見れば彼は亡くなった人の家族でもないのにその場の上座に上がっていた、そしてそこに自分の食事を持って来て食べているのだ。
「上座に上がっている」
「ご家族でもないのに」
「家族を励ます口実でな」
「あんなことする人はじめて見たわ」
「わしもだ、もうだ」
「本当にどうにもならないわね」
「ああ、今この場でもだ」
「破門を言いたいわね」
「そうしたい」
その気持ちを抑えていた、そしてだった。
食事を終えると多くの人が去り身内だけになり示現は彼等に話をしたが。
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