第四章
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「もうな」
「匙を投げるの」
「御仏の教えは誰もを救うものでだ」
「あなた自身もそうしたくなくても」
「それでもな」
「あの人については」
「どうにかなるか」
よくなるか、というのだ。人として。
「それはな」
「無理かも知れないわね」
「そうかもな」
夫婦でこんな話をした、そしてだった。
その人物の家の法事にだった、示現は出て僧侶として取り仕切ったがその後で話をする時があったが。
この時その人物は彼の叔父に注意された。叔父は脳梗塞からリハビリをして何とか元気さを取り戻している中だった。
「うちの家がどうとか言うけれどな」
「うちはそんな悪い家か」
「悪いとは言っていないだろ」
叔父は彼に穏やかに言った、脳梗塞の影響で滑舌がやや、だ。
「あの家が家族穏やかでな」
「いいっていうのか」
「それだけだ、それに」
叔父は彼にさらに言った。
「そう言うお前もそんなにな」
「そんなに!?」
「大したものか」
「俺が何だっていうんだ」
彼はそう言われて怒った。
「何言ってるんだ」
「何って何だ」
「俺に何か言うな、今度言うとな」
叔父に凄んで言うのだった。
「ぶん殴るぞ」
「おい、待て」
取っ組み合いにもなった、ここでだ。
彼の他の親戚達が全員で止めた、それで難はそれ以上はなかったが。
しかしだ、示現はその現場を一部始終見てだった。
寺に帰って妻にこのことを話した、すると。
妻は項垂れてだ、夫に言った。
「もうね」
「これはだな」
「本当にね」
「どうしようもないかもな」
「ええ」
項垂れて言うのだった。
「これはね」
「もうわしもな」
「そう思ったわね」
「これまでも駄目だったが」
それでもというのだ。
「こんなことで怒ってな」
「自分の叔父さんに」
「しかも身体の悪い人にだ」
「殴ってやろうかで」
「掴みかかってな」
「もうこれは」
「ああ」
妻に溜息を出してから言った。
「本当にな」
「どうにもならないかしらね」
「もうわしでもな」
「そして誰でも」
「どうにもならないかもな」
「御仏でもね」
「そもそもな」
それこそというのだ。
「法事の時だから」
「その時にそうだと」
「御仏もだ」
「仏罰を与えられるわね」
「そしてそれに気付くか」
仏罰を与えられたとだ。
「はっきり言える」
「気付かないわね」
「絶対にだ」
「そんな人は」
「今回は本当にもうだ」
「どうにもならないって確信したのね」
「そうなった」
実際にというのだ。
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