第一章
[2]次話
ある程度の資質
この時とある寺の住職である示現白髪で僧衣と袈裟を身に着けた小柄な老人である彼は寺の中にある自分達の暮らしている場所で妻の菊枝自分と同じ位の年齢で白い髪の毛をパーマにしたやや太った彼女に言っていた。
「出来ればね」
「見捨てたくないわね」
「それは御仏の教えか」
「違うわね」
「そしてわし自身も」
仏教の考えでなくてもというのだ。
「やはりね」
「見捨てずに」
「何とかしたいが」
「けれどね」
妻は溜息を出してから言った。
「皆ね」
「どうにもならないと言っているな」
「ええ、和利もね」
二人の息子で今は寺を継ぐ為に修行している彼もというのだ。
「あの人については」
「どうにもならないと言ってるな」
「そうだしね」
「実際誰が何を言っても」
「変わらないわね」
「あの人はな」
「御仏の教えをお話しても」
それでもというのだ。
「全く頭に入れないで」
「変な文句ばかり言うな」
「わからないとか言ってね」
そうしてというのだ。
「御仏は何人かわからないとかね」
「そんなことを言ってな」
「宗派の仕組みに文句言うし」
「檀家のな」
「そんなこと言う人はじめてよ」
「全くだ」
次元は菊枝に難しい顔で述べた。
「そんな人はな」
「はじめてよね」
「本当にな」
「そうだというのだ。
「宗派の人でもな」
「階級みたいだとか世襲だとか」
「挙句別の宗教団体がどうとか言うしな」
妻に苦りきった顔で話した。
「何人信者にしたら偉くなるとかな」
「そうした団体もあって」
「あと信者になるのが難しいとかな」
「変なことばかり言うわね」
「それも偉そうにな」
「何が偉いのかしら」
菊枝はこのことに首を傾げさせた、寺の中で家族が暮らしている場所の居間の中で向かい合って座って話をしている。
「一体」
「それがわからないな」
「普通のお家でね」
「生まれはな」
「知られていない高校を出て」
「何でも普通の学校は落ちてな」
「学歴がなくて」
尚示現も彼の息子も大卒である、自分の宗派の大学に入ってそこで僧侶の資格を得て住職になっている。
「そしてよね」
「卒業してからまともに働かなかった」
「資格も肩書もなくて」
「お金も地位もないんだ」
「何もないわね」
「奥さんに食べさせてもらっていてな」
「その奥さんにも偉そうにばかり言って」
そうしてというのだ。
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