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金木犀の許嫁
第三十六話 織田作之助の街その五

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「スマホもあるし」
「グーグルの地図で検索出来るね」
「だからね」
 それでというのだ。
「任せて、それに私道進むの特異な方で」
「迷わないんだ」
「そうなの」 
 実際にというのだ。
「そうなったことないし」
「それは有り難いね、俺もね」
 佐京は夜空の話に微笑んで返した。
「道に迷うことなかったから、これまで」
「忍者は道に迷うと」
「そう、お話にならないから」
 だからだというのだ。
「地図や道のこともしっかりとね」
「頭に入れて」
「把握する様にしているんだ」
「それも修行のうちなのね」
「忍者のね」
 夜空に微笑んで話した、上本町の街中で。
「そうなんだ」
「やっぱりそうよね」
「忍者はね」
 何といってもというのだ。
「道に迷うと」
「お話にならないのね」
「うん、そうしたものだから」
「ちゃんと見ているのね」
「そうなんだ、だからこの辺りはよく知らないけれど」
 それでもというのだ。
「もう地図は頭の中にね」
「あるのね」
「そう、だから」
 それでというのだ。
「お互いにね」
「一緒にね」
「行きましょう」
「それじゃあね」
 二人でこう話してまずは織田作之助の出身校である高津高校の前に来た、今校門は閉じられていたが。
 その校門から校舎を見てだ、夜空は言った。二人共着飾っておらずラフなズボンとシャツという動きやすい恰好だ。
「この学校にね」
「織田作さん通っていたんだね」
「そうなのよね」
「その頃は旧制中学で」
「その時に通ってたのよね」
「そうだったね」
「この学校にね」
 こう話すのだった、校舎等を見ながら。
「学生時代は、ここから毎日通っていたのよ」
「本当に織田作さんの学校だね」
「そうよね、何でも織田作さんの資料もね」
「あるんだ」
「この学校の中にはね」
「そうなんだね」
「だからね」
 それでというのだ。
「織田作さんのことを調べている人は」
「この学校にも来るんだね」
「そうみたいよ」
 こう佐京に話した。
「何でもね」
「そうした場所でもあるんだね」
「そうらしいわ」
「母校だから」
「京大も母校だけれど」
 それでもというのだ。
「中退だし帝大にはね」
「あの人行ってないんだよね」
「だからね」
 そうであるからだというのだ。
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