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金木犀の許嫁
第三十六話 織田作之助の街その四

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「豊かなものがです」
「ありますね」
「大阪には」
「そしてそのこともですね」
「今後です」
「感じるといいですね」
「はい」
 まさにというのだ。
「そうされて下さい」
「わかりました」 
 佐京は微笑んで答えた。
「そうしてきます」
「深い街です」
 大阪はというのだ。
「ですから」
「何かとですね」
「学ばれて下さい」
「わかりました」
 佐京は幸雄に素直な顔と声で応えた。
「そうしていきます」
「何度もです」
「行ってですね」
「学ばれて下さい、また住まれても」
「いいですね」
「司馬遼太郎さんは東大阪市ですが」
 大阪市でなくというのだ、この昭和を代表する歴史作家は生涯この街から離れなかった。大学も就職先もそうであった。
「やはり大阪からです」
「離れず暮らしていて」
「そして何かと学んでいました」
「あの人もそうでしたね」
「はい」 
 そうだったというのだ。
「あの人も」
「そうでしたね」
「大阪は非常に魅力的で」
 そうした街でというのだ。
「多くのものがあります」
「その中に」
「安倍晴明さんにもです」
 このあまりにも有名な陰陽師についてもというのだ。
「縁があります」
「清明神社ですね」
「あちらもありますし」
「何かとですね」
「学ぶことがあるので」
「学ぶといいですね」
「織田作さん、ご先祖様達以外にも」
 まさにというのだ。
「多くのことをです」
「学ぶといいですね」
「はい、多くの人もそうしてきましたし」
「それで、ですね」
「よく学ばれて下さい」
「そうしていきます」
 確かな返事をだった、その返事をしてだった。
 二人は朝食と歯磨きの後で大阪に向かった、電車に乗ってまずは上本町に来た。地下鉄の谷町六丁目駅からだった。
 外に出るとだ、夜空は佐京に話した。
「この辺りも知ってるわ」
「大阪で暮らしていたから」
「生まれもそうでね」
 佐京に顔を向けて微笑んで話した。
「最近まで暮らしていたから」
「よく知ってるんだね」
「そうなの、だからね」
 それでというのだ。
「案内任せて」
「案内してくれるんだ」
「ええ、地図もあるしね」
 大阪市の地図を出して話した。
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