第三十六話 織田作之助の街その二
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「勝つか負けるかだとも」
「誰に勝つのかしら」
「さて、それは」
そう聞かれるとだ、白華は首を傾げさせて応えた。
「わかりませんが」
「誰と戦って勝つかは」
「それでもそうしたものらしいです」
デートはというのだ。
「ですから」
「私達もなのね」
「勝負をして」
何と戦い勝つかはわからないがというのだ。
「勝って来て下さい」
「それじゃあね」
「はい、そして」
白華は話を続けた。
「勝って帰って下さい」
「アイーダみたいね」
夜空は先日学園の歌劇場で上演されていたこの歌劇のアリアを思い出した、ヴェルディの代表作の一つである。
「それじゃあ」
「あの歌劇ですね」
白華もアイーダを知っていて頷いた。
「そうですね」
「ちょっと思い出したわ」
白華と話してというのだ。
「あの歌劇の歌をね」
「ヒロインのアイーダが歌う歌ですね」
「そうだけれどね」
「勝って帰るといいますと」
「そうだとね」
こう言うのだった。
「思い出すわ」
「そう言われるとそうですね」
「じゃあ勝ってね」
夜空は白華の言葉受けて彼女に答えた。
「帰って来るわ」
「そうしてきて下さい」
「絶対にね」
「色々見て来て下さい」
幸雄も言ってきた。
「織田作さんの場所を」
「あの人がおられた」
「今もです」
幽霊になってもというのだ。
「きっとです」
「自由軒や夫婦善哉を」
「口縄坂もです」
こちらもというのだ。
「巡っておられます」
「そうされていますね」
「そういった場所をです」
「二人で巡るんですね」
「そうされて下さい」
「わかりました」
佐京は幸雄に微笑んで答えた。
「そうしてきます」
「それでは、思えばです」
幸雄はこうも言った。
「私達のご先祖様達もです」
「大坂で戦いましたね」
「大坂の陣で」
この戦いでというのだ。
「歴史に残る戦いをしました」
「そうした場所でもありますね」
「そして公ではです」
歴史の表ではというのだ、ここで言われていることは公のことであり真相とは違うことであるのだ。
「大坂で、です」
「幸村公は戦死していますね」
「遂に矢尽き刀折れ」
そうなりというのだ。
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