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五十一番目の州
第四章

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「一体」
「詐欺師ですよね」
 身もぢはこう返した。
「自分のことしか考えない」
「私利私欲が暴走した」
「はい、エゴしかない」
「もう国家や国民、世界のことは考えていないよ」
「全くですね」
「だからあれだけのことが出来るんだ」
「国益でなくて自分のことしか考えていないので」
 そしてというのだ。
「平気で嘘を吐いて騙して利用する」
「何を以て悪人と言うのか」
 小林は冷静な声で述べた。
「人を自分の為に利用するのなら」
「それも私利私欲の為に」
「もうそれはだよ」 
 まさにというのだ。
「悪人だよ」
「あの候補は悪人ですね」
「本物のね」
「悪い噂は一杯ありますし」
「口を開けば嘘と罵倒となるとね」
 それならというのだ。
「まさにだよ」
「本物の悪人ですね」
「恥も外聞もない、思いやりも品性もモラルもだよ」
「何もない」
「私利私欲ばかりでね」
 それでというのだ。
「絶対に大統領どころか近くにいるべきでもない」
「本物の悪人ですね」
「そう、しかしだよ」
「あの人は賛美していますね」
「彼を含めたああした者達のことは少し前に言ったが」 
 それでもというのだ。
「偏見の塊で何も学ばず教養も知性もモラルも常識もない」
「排外主義で許されるなら何でもしますね」
「そう、レベル的には同じだね」
「そうですね」 
 三森も確かにと頷いた。
「本当に」
「そして同じレベルで自分達のそうしたものを超大国の大統領としてだよ」
 圧倒的な権力を持つ者としてというのだ。
「全肯定してくれる存在と見てね」
「賛美するんですね」
「そして賛美するからこそ」
 それ故にというのだ。
「ああ言ったんだよ」
「日本はあの国五十一番目の州になれと」
「そこで同類が改革兵の政党に政権が映れば自党的に離脱する様に言ったね」
「どっちも酷かったですね」
「彼等は普段何かあると相手を売国だと罵るがね」
「自分達もですね」
「売国奴だよ」
 彼等が最も嫌う、というのだ。
「同類だよ」
「そうなのですね」
「そう、そして」
 そのうえでというのだ。
「人間として大事なものを一切持っていないからね」
「モラルや教養、常識や羞恥心をですね」
「だからこそだよ」
「ああ言ったんですね」
「日本はあの国の五十一番目の州になれとね」
「幾らその人が好きでも」
 三森は眉をこれ以上はないまでに顰めさせて言った。
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