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五十一番目の州
第二章

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「全くね」
「そうですね」
「そう、そしてね」
 それでというのだ。
「ああした連中は純文学も読まなくて」
「三島由紀夫が好きだと思いますが」
「その三島の作品も碌に読んでいないよ」
「三島を語っても」
「全くね」
 それこそというのだ。
「見向きもしないよ」
「そうしたものばかり読んで」
「延々とね、だから知識も教養もだよ」
 そうしたものもというのだ。
「なくてね、そしてやりたい放題をしたいだけだから」
「モラルや常識もですね」
「ないんだよ、彼等は自分達以外を決め付けてね」 
 主観、偏見に基づいてというのだ。
「排除して罵りたい、そして許されるなら」
「攻撃したいですね」
「自分達が傷付かないならね」 
 それならというのだ。
「そして学ばないから福祉も経済も知らないよ」
「政治を熱心に語っても」
「貿易も法律もね、人権もね」
「人権派侵害していますね」
「そう、ただ歴史や軍事を齧っているだけで」
 そうであってというのだ。
「勿論環境のこともだよ」
「興味はないですか」
「敵をみなした相手を罵倒するには使ってもね」
 それでもというのだ。
「ただ愛国を喚くだけでね」
「何も知らないんですね」
「学ぶつもりもないよ、宗教も知らないなら」
 それならというのだ。
「当然哲学も知らない、科学なんてね」
「そちらもですか」
「知らないし興味もない、ゴリラを狂暴と教えれば」
 非常に温厚で心優しいこの生きものをだ。
「何も調べず鵜呑みにしてね」
「ゴリラを嫌いますか」
「そうするよ、自分に都合のいい話なら飛びついて」
 そうなりというのだ。
「自分の都合よく解釈してな」
「喚くんですね」
「それを延々と続けるんだ」
「進歩はしないですか」
「する筈がないよ、一つの限られた事例を見て」
 そうしてというのだ。
「そこから全体も言う」
「そこから差別もしますね」
「これは差別主義の典型的なサンプルだけれど」
 それでもというのだ。
「彼も然りだよ、今言ったことが全部当てはまる」
「そんな人ですか」
「だから保守と言っても」
 それでもというのだ。
「似非だよ、福田恒存や竹山道雄と比べると」
「保守の論客として名高かったですね」
「もうね」
「全く違う、似非ですか」
「小者にもなれはしない」
 そう呼ばれる存在にもというのだ。
「なれないね」
「その程度ですか」
「そう、まさにね」 
 今彼が言った通りにとだ、三森自身に言った。
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