激闘編
第九十七話 矜持
[8/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
督と並ぶ同盟の英雄ではありませんか。自信がないなどと…ブルース・アッシュビーの再来と謳われる貴方の名声に傷が付きますよ」
ウインザーはそう言って薄く嗤った。酷薄そうな嗤い方だ。この女の旦那はこの女のどこがよくて一緒になったんだろう…家でこんな笑い方されたら気が滅入ってたまらんぞ…いかんいかん…。
「名声で戦争に勝てるなら大事にもしますけどね。それに自信が無いのでは無く、困難だと申し上げているのです」
ウインザーが続けようとしたのをサンフォードが制した。
「一体、どの様な困難があると言うのだね?」
「兵力が足りません」
「何、兵力が足りないだって?」
「はい。その上地の利もありません。これでは勝てません」
俺の簡単な物言いにサンフォードは面食らった様だった。専門的な用語を並べても理解してもらえるか判らないから、誤解のないように分かりやすく言ったつもりなんだが…黙ってしまったサンフォードに代わって、再びウインザーが口を開いた。
「それを勝てる様にするのが貴方達軍人の本分でしょう?それに、たとえ兵力が足りずとも、たとえ地の利が無かろうとも、専制政治打破の為には…」
ウインザーの必殺技が飛び出した。
「まあまあ、落ち着いて下さい。キャゼルヌ少将、資料を皆さんに配ってもらっても宜しいですか」
必殺技を邪魔されて不満げな美魔女を尻目に、キャゼルヌ少将が無言でペーパーを配っていく。
「ゆっくり読んでもらって構いません」
ペーパーに目を通す賛成派閣僚達の顔が曇っていく。対象的に反対派…レベロやホアンの方は深く頷いていた。同じ反対派でもネグロポンティはペーパーの内容に驚いている様だ。まあ仕方がない、当時の奴はこれを見られる立場にはなかったからな…。
ペーパーから目を上げたレベロから称賛の言葉があがった。
「よく出来た資料だ。内容から察するにこの資料はイゼルローン要塞攻略作戦の時の物の様だが、キャゼルヌ少将、君が作成したのかね?」
「いえ、これは当時の宇宙艦隊司令部の作戦参謀であったウィンチェスター提督や後方主任参謀が作成したものです。当時小官はシトレ氏の首席副官でありましたので多少は関わらせてもらいましたが…後方任務、補給に携わる者として言わせていただければ、たとえ戦場で帝国艦隊を撃破したとしても、その後が続きません。際限無く物資を放出せねばならないのですから」
「その通りだ…二人とも軍人ではなく財政委員会の方が向いているのではないかな…それはともかく、議長、これでは再出兵など成功する筈はありませんぞ。中止すべきです」
レベロの横でホアン・ルイが何度も頷いている。サンフォードは沈黙したままだ。誰かが助け船を出すのを待っているのだろう。だけど誰も喋ろうとはしない。諦めた様にサンフォードが口を開いた。
「だが、この資料は過去のものだ。
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ