激闘編
第九十七話 矜持
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願がイゼルローン要塞奪取になったのは当然の帰結だったろう。だからこそヤンさんでさえもイゼルローン要塞を陥とす事が出来れば講話の道が開けると勘違いしてしまったのだ。同盟軍が攻勢に向いていない証拠がある。帝国領進攻だ。原作での描写は、闇落ちフォークの口車に乗せられて事が進んでしまった感のある作戦だが、ある意味フォークの言っている事は正しい。『高度な柔軟性を保持しつつ臨機応変に対処する』…まさに攻勢に出る軍隊に求められるのはそれであって、何もおかしくはないのだ。欠点は具体的な方策を示せなかった事にある。フォークは参謀だから、当時の宇宙艦隊司令長官であるロボスの意志決定の補佐や助言を行うのは当然で、具体的な方策を決められなかったのはフォークではなく司令官達の方なのだ。あの戦いの罪は同盟軍上層部にある。自分達の攻撃ターンなのに具体的な策を示せないというのは、攻め手がない、もしくは考えた事がないというのと同じだ。何故なら考える必要がないからだ。同盟軍の任務は国土防衛にある…皆がそう考えていた事の証左がここにある。
俺の居るこの世界でもそれは同じだ。帝国を倒すという願望はあるが、それについての具体的方策はない。ヤンさんはましな方だろう、講和を考えていたのだから…これは決してヤンさんを批判しているんじゃない、イゼルローン要塞を陥とせば何とかなる、いう考えはこの時代の同盟市民として、同盟軍人として当然の帰結なのだ。状況を変えるにはイゼルローンを陥とすしかなかったのだから…。
だからこそヤンさんが策定に関わっても動員兵力を増やすという選択しか思いつかなかったのだ。俺がヤンさんだったとしても結果は同じだったろう、純軍事的にはそれしか手がない。だからこそ辺境を経済的に浸蝕する、という方法を採っているんだけど…。
「作戦目的を辺境守備の五個艦隊の撃破に変更しましょう。これなら随分変わって来る筈です」
「成程、それなら充分に成算があります。ですが、勝手に作戦目的を変更しても宜しいのですか?」
「壁に描かれた美味しそうなパンと目の前にある特売のパン、総参謀長はどちらを選びます?」
「心でパンは食べられません、特売のパンでしょう」
「ですよね。軍人も政治家も現実主義者の集まりです。サンフォード議長は成功の可能性が高い方を選ぶと思いますよ。最高幕僚会議の開催を要請しましょう」
「幕僚会議ですか…作戦目的の変更だけなら、幕僚会議の場は要らないのではありませんか?」
「変更した作戦案を提示してああだこうだ言われるより、その過程に参加して貰った方が手っ取り早いでしょう?それに、議長には覚悟を決めて貰わねばなりませんからね」
「覚悟、ですか?」
「そうですよ。失敗したら議長の座を降りるだけでは済みません。下手すると帝国軍がまた同盟領内に攻めて来るのですから。国を失う覚悟がある
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