激闘編
第九十七話 矜持
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では有名だけど、艦隊司令官もアッテンさんに替わっているし、規模も半個艦隊規模だからそれ程帝国を刺激しないだろう…。
「…どう思われますか、副司令長官」
「え?ああ…うーん…」
パン屋…総参謀長のチュン・ウー・チェンが訝しそうに俺を見ている。俺と総参謀長が見ているのは再出兵の概略だった。ビュコック長官は奥方の体の調子がすぐれないという事で休暇を取っていて、宇宙艦隊司令部は総参謀長が切り盛りしていた。俺は捕虜交換の方をやっていたし、おまけに作戦案を練るのを手伝っていたヤンさんも居なくなったから、宇宙艦隊司令部は夜逃げ閉店間際のパン屋…といった有り様だった。
「動員兵力が増えていますね」
「はい。十個では到底足りませんので」
パン屋のいい所は言葉を飾らない所だ。当初の動員兵力は十個艦隊の想定だった。それが国内に一個艦隊を残して十二個艦隊を動かす事になっている。
「国内に一個…これでは不測の事態に対処出来ないのでは」
「当初の想定通り三個艦隊残したところで、対処し得ませんよ」
そうだ。国内に残した三個艦隊を動かす時は前線が崩壊したという事だからだ。
「イゼルローン要塞攻略戦の時、閣下がアムリッツァで踏みとどまるという作戦を立てた訳がやっと解りましたよ。当時も今も、進攻作戦を行うにはまるで戦力が足りません」
そうなのだ。帝国の兵力が原作の同盟末期の様な状態ならともかく、辺境守備にラインハルトの五個艦隊、帝国中枢に十個艦隊が存在するこの状況では、一戦場で勝つ事すら至難の技だ。しかも地の利は帝国にある。手伝っていたヤンさんも頭を抱えたに違いない。
「ヤン提督は何か仰っていましたか?」
「今私が口にした言葉と一言一句同じ事を仰っておられました。それと…」
「それと?」
「同盟軍は外征に向いた組織では無い、とも仰っていましたよ。言われて思いましたが、私も同感です」
軍隊というのは、その成立経緯によって組織の性格が決まる。同盟軍も例外じゃない。同盟が建国された当時、同盟の存在は帝国には察知されていなかった。当時の為政者達は何を考えたか。同盟領域の防衛に徹する、という事だっただろう。国是として専制政治の打破を唱えざるを得ないにしても、現実問題としては国土防衛に徹せざるを得ない。それに戦闘のアドバンテージは先に攻撃してきた側が持つ。帝国軍が攻めて来れば同盟軍は受動的な立場に置かれる。そういう図式が固定化して、次第に同盟軍は国土防衛軍という性格を持つに至ったのだ。そしてイゼルローン要塞が出来てからは益々その傾向が顕著になった。時折要塞攻略戦を企図するものの、大きな戦いは同盟領内で発生するからだ。それもその筈で、イゼルローン要塞という蓋を抜かない限り帝国領に入れないからだ。帝国軍は防御に絶対の自信を持った上で安心して攻勢に出る事が出来る。同盟軍の悲
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