八十八 雲隠れ
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ていないだと…!?)
閻魔から解放する死者の魂がひとつとして、無い。
故に術を発動したとしても長門自身に術の反動が返ってくることもない。
誰も死んでいない。
その事実を言葉として口にしようとした瞬間―――。
「どうぞそのまま、」
背後で、囁かれた小声。長門にしか聞こえない声量で、長門にしか見えぬ角度で。
波風ナルと小南の視覚には入らない死角で、ギラリと何かが長門の身体に刺し込まれる。
「お眠りください」
注射器の先端が注入される。
なにかわからぬモノが己の身に注射され、ぐるり、と視界がぼやけ始める。
意識が虚ろになる最中、長門は見た。
脊中で腕を組んでいるふうに見せかけ、隠し持っていた注射器の中身を注入する。
さりげなく背後に佇み、闇に紛れて、その実、この瞬間を狙っていた不届き者を。
樹洞の暗がりで妖しく光る眼鏡を押し上げ、カブトはいっそ、優しげに微笑んだ。
「――――僕の主人の為に」
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