八十八 雲隠れ
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を潜入させたが、その何れも失敗に終わっていることから、雷影は木ノ葉には一目置いていた。
それなのに何故、未だに抜け忍をのうのうと野放しにしているのか。
「今までの情報からある程度の居場所を割り出して、虱潰しに捜させろ!一個大隊を出しても構わん!」
キラービーの行方を探るべく、部下に命じた雷影は続け様に「それから、」と秘書に視線を向けた。
「サムイの小隊を呼べ!うちはサスケを此方で始末する旨の書面を持たせて木ノ葉へ向かわせる!そいつの情報も出させろ!」
ドカリ、と椅子に腰をおろす。
雷影の巨体に合わせた椅子がギシリ、と苦悶の声をあげた。
「更に、忍び五大国五影首脳会談の段取りをつける!『暁』は絶対許さん!」
「―――俺の話を聞かせてやった」
小南の術の紙で形作られた偽の樹木。
樹洞の暗がりで、長い永い語りが終わる。
「答えを聞かせてもらおうか」
長門の過去を聞いて、ナルは顔を俯かせる。
「戦いとは双方に死と傷と痛みを伴わせるものだ。死に意味を見出そうとしても、あるのは痛みとどこにぶつけていいかわからない憎悪のみ…ゴミのような死と永久に続く憎しみと癒えない痛み…それが戦争だ」
平和ボケした火の国。
木ノ葉隠れに依頼する依頼金が戦争の資金になり、戦争に少なからず加担した事実を知りつつ、偽善の平和を口にする民。
小国の犠牲の上に成り立つ大国の平和。
生きているだけで気づかぬうちに他人を傷つけ、存在し続ける限り憎しみが存在する。
誰かの平和が誰かへの暴力。
双眸を閉ざして顔を伏せる金髪に、長門は長年己が抱き続けた疑問を容赦なくぶつけた。
「この呪われた世界に本当の平和など存在しない」
「なら…オレがその呪いを解いてやる。平和ってのがあるのならオレがそれを掴み取ってやる」
遠い昔。
読んだことのある、いや、己自身が実際に口にしたその台詞に長門の眼が大きく見開かれた。
「オレは諦めねェ!」
「おまえ…それは、」
かつて昔の長門が自分なりに考えて出した答え。
その答えをヒントにして師匠である自来也が書いた本を、ナルは懐からとりだした。
その中の一場面の台詞が、今まさにナルが告げた言葉と一字一句変わらない。
そう、昔の長門の信条そのものだった。
「俺は自来也を…師を信じることができなかった…イヤ、自分自身をも…」
ナルの姿が、若かりし頃の自分と被って見える。昔の長門を思い出させる。
弥彦と小南と共に『暁』を設立した頃のキラキラと希望に溢れていたあの時の自分を。
「
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