第108話 凶報
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七は行方を血眼になって探しています。近いうちにアナタのオフィスにも訪れるでしょう。居場所をご存知なら軍が先回りして保護することもできます」
何故そこまで今回のシノギ『程度で』そこまでC−七が怒り狂っているのか。バグダッシュの言う通りなら、近々訪れる人達がきっと教えてくれると思うが……
「悪いけど『知ったことか』だね」
個人的には俺が書き上げた『Bファイル』がワレンコフへの暗殺の引き金になった可能性が高いだけに、チェン秘書官の命を懸けた行動を、直接の敵ではない軍情報部であっても縛らせたくはない。仮に保護したとしても、チェン秘書官になんら恩義のあるわけでもない軍情報部だ。中央情報局との取引材料に使わないとも限らない。
「チェンさん、このままだと殺されますよ。アンタそれでホントに良いんですか?」
シミ一つない白いテーブルクロスに皺が寄り、音も立てず料理の位置が僅かにずれ、怒りと失望がないまぜになった瞳が俺を射すくめる。原作のアニメーションでも見たことのない、暑苦しいまでの情熱が籠った表情だ。まだ『若い』からなのか、それともこれも挑発の表情なのか、俺の乏しい脳味噌では分からない。
「彼女は覚悟の上だよ」
俺が視線を向けることなく、ワイングラスを置いてナバハスに手を出したのを見て、バグダッシュも口を割らないと見たのか、同じようにナイフとフォークを取ってナバハスに取りかかる。歯ごたえの良い、濃厚な旨味が口の中に広がるのを感じながら、ワインを口に送り込むのを繰り返しているうちに、バグダッシュの顔から情熱が消えて冷静さが戻ってきた。
「……つまり人の良いアンタは、私や情報部が知らないヤバそうなネタを知っていて、あの女狐に好きなようにやらせてるっていうわけですな」
「まぁね」
軍情報部も可能性ぐらいは検討しているだろうが、今年中にフェザーン自治領主が暗殺されるかもしれないなどという戯言を言ったところで、バグダッシュ自身は容易には信じないだろう。しかし少なくともチェン秘書官は、いつもの余裕をなくすくらい可能性が高いと思っている。
「……ということは、『結論』はすぐに出そうなんですな」
「さぁね」
明確な時期は分からない。とりこし苦労の可能性だってある。それならそれでいい。残り半年。ワレンコフの命運がチェン秘書官によって救われるのであれば重畳。俺ののらりくらりとした対応に、バグダッシュは小さく鼻で笑うと、少しだけ余所見をしてから口を歪ませつつウィンクしてくる。
「秘書官がいなくて随分お困りって聞いてますよ? どうです。ウチにイキのイイ若いのがいるんですが?」
「……流石に情報部の選り抜きはご遠慮したいかな」
「勇気と忠誠と格闘戦において比類なきブルネットの女の子でも?」
「能力の前に、誰に対する
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