第108話 凶報
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するが、俺が要らぬところから恨みを買ったことは間違いない。流石にフェザーンの触手が伸びていることを知った軍情報部が、一応は『タダで』国益を守ったことになる俺を彼らに売るようなことはしないと思うが、それも薄氷だ。
注視すべき中央情報局にはフェザーンのスパイが居た。十分承知の上で国防委員会に潜り込ませて『使っていた』とは思いたいが、今回の件でどうなのか分からなくなった。何しろ中央情報局自体は国家安全保障に関する情報を収集分析することを任務としており、今回の件で本来だったらフェザーンの『シノギ』を事前に察知して阻止すべきだったのに、結果的には企業と軍部だけで解決してしまった。
盗聴器だったはずのチェン秘書官が機能していなかったこと。さらには姿をくらましていたことで、国外諜報を任務とする第七部の面子は丸つぶれ。中央情報局自身が国内企業から信頼されていないという現実もさることながら、政府内でも相当肩身が狭くなった。それで殺気立っているのか。例の高級クラブが三日後には火事になったという話も耳にした。死者・負傷者が出てないのが幸いだが……
「……あの童顔の姿が消えていたことで、アンタも相当疑われています。ただCに居る連中はみんな苦労人ばかりなので、アンタのことはヨブさんお気に入りの世間知らずの男妾としか見てませんが」
「それもあながち間違っていない」
別邸や深夜の議員事務所には何度も呼ばれていたし、予算審議ではヨブ氏と協力して関係各所と折衝して来たから、氏の手先だと思われても仕方ない。顔も量産廉価品優男だし、普段から言葉遣いには気を付けているから、エベンスのようなイメージを軍人に対して持っている人間からしてみれば、俺が男妾に見えてもおかしくない。納得して怒りもしないのを見て、バグダッシュは小さく鼻息を吐いてから皮肉っぽく肩を竦めた。
「ここ最近仮面を被った色男達が、街中に姿を現していないことに気が付かない程度の連中です。ま、アンタの中身に辿り着くには、あと一〇年くらいはかかるでしょうよ」
「良い画、取れてた?」
「アマチュアアクションムービーとして配信したら、なかなかイイ感じに『お小遣い』が手に入りそうですな。公開前に検閲が入ってしまうのは残念な限りです」
いい気味だぜと言わんばかりの気持ちのいい笑顔でグラスの中身を一気に飲み干し、口を尖らせて軽く息を吐きながらワインの香りに浸る。だがそれも数秒。音を立ててグラスをテーブルに置くと、バグダッシュはホテルシャングリラ襲撃前にシェーンコップ相手に話していた時と同じような、これまで俺に見せた事のない真剣な目付きで口を開く。
「『童顔』の行く先を教えてください。まさか親が病気になったから故郷に帰るって話、本気で信じたわけじゃないですよね?」
「そのつもりだけど?」
「C−
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