第百四十三話 豆腐を食べてその八
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「本当にそのうちわかる」
「嫌でもね」
「人は生きていると絶対に人の死に出会うからな」
「そうなるからね」
「お父さんお母さんだって死ぬんだ」
「人は絶対に死ぬから」
こうしたことも言うのだった。
「だからね」
「私もなのね」
「絶対にね」
「人が死ぬところを見るのね」
「死から逃げられるなんて」
母は一華に真剣な顔で話した。
「誰にもよ」
「出来ないことね」
「自分自身も死ぬし」
人はというのだ。
「何時かはね、それで周りの人達もね」
「死ぬから」
「そう、はっきり言えばお母さんもそうで」
「お父さんもな」
父も言ってきた。
「死ぬからな、絶対に」
「何時かはね」
「それは何時かはわからないけれどな」
「人は死ぬ場所と死に方は選べないから」
「けれどな」
「お母さんもお父さんも死ぬわよ」
母は確かな声で話した。
「絶対にね」
「だから一華もな」
両親が死ぬからとだ、父は娘に話した。
「何時かはな」
「お父さんもお母さんも亡くなって」
「他の人達だってな」
「死に遭うのね」
「そもそももう遭ってるな」
父はこの現実も話した。
「そうだな」
「それはね」
そう言われるとだった、一華も否定出来なかった。そして湯豆腐を食べつつ暗い顔になって言葉を返した。
「ひいお祖母さんのお兄さんとかね」
「お父さんのお祖母さんのご兄弟だったな」
「あの人には会うと凄く可愛がってもらったけれど」
それでもというのだった。
「百歳まで生きてって言ったのに」
「そこまではな」
「生きられなかったわ」
「大往生だった」
その死はというのだ。
「老衰でな」
「いい死ぬ方だったのね」
「ああ、しかしな」
それでもというのだ。
「死は死でな」
「やっぱり人は死んで」
「その時お前はどう思ったんだ」
「悲しかったわ」
一華は父に俯いて答えた。
「やっぱりね」
「そうだな」
「百歳まで生きて欲しかったって」
その様にというのだ。
「今だってね」
「思うな」
「ええ」
そうだと答えた。
「本当に」
「そうだ、人は生きていると」
「それだけで死と関わるのね」
「もうそれはどうしてもな」
何があろうともというのだ。
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