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高いものはそうは売れない
第二章

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「それならな」
「尚更ですか」
「電化製品で高いと」
「売れないですか」
「そうなんだよ、わしとしても売れて欲しいけれど」
「ノルマとかありますしね」
「しかしな」
 それでもというのだった。
「そうはいかないんだよ」
「そうした色々な事情があって」
「それでだよ」 
 まさにというのだ。
「売れないんだ」
「そうなんですね」
「皆がここで幾ら頑張ってもな」
 この店でというのだ。
「戦争はどうにもならないんだよ」
「そうですね」 
 石田も確かにと頷いた。
「そればかりは」
「しかも高いとな」
「それだけで売れにくいですね」
「売れた時が大きいってな」
 笑顔でだ、星谷は石田に言った。
「そう思ってな」
「やっていくことですね」
「そうだよ、特にこんな時はな」
「戦争があると」
「それが日本のことでなくてもな」
「影響を受けて」
「苦しくなるんだ、そこはな」
 星谷は達観した様に言った。
「受け入れてな」
「そうしてですか」
「やっていこうな」
「今はですね」
「ああ、苦しい時でも仕事があるんだ」
 そうだというのだ。
「それで飯が食えてるんだからな」
「やっていくことですね」
「戦争もやがって終わって物価も節電も落ち着くさ」
「やがてはですね」
「だから今は頑張ろうな」
「わかりました」
 それならとだ、石田は星谷の言葉に頷いてだった。
 店で働き続けた、そしてだった。
 そのクーラーが売れた時にだ、大谷に笑顔で言った。
「売れる時は売れてな」
「嬉しいですね」
「うん、本当に今は大変だけれど」
「頑張っていくことですね」
「そうしていこう、そして高いものは売れたら嬉しい」
「そう思ってですね」
「やっていこう」
 こう言って売れたことを喜ぶのだった、そのうえで今日も店で皆で笑顔で元気に働いていくのであった。


高いものはそうは売れない   完


                   2024・9・22
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