第三十五話 大阪でのデートその十
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「昔のいづも屋はね」
「どうしたの?」
「鰻丼がご飯の中にあったのよ」
「あっ、そうだったわね」
夜空も知っていることだった、この店の鰻丼はそうしたものでありそれが大きな特徴であったのだ。
「あそこの鰻丼はね」
「そうでね」
「作品の中でも言ってたわね」
「主人公二人が食べる時にね」
柳吉が蝶子を連れて行って一緒に食べる時に話したのだ。
「こうしたものだって」
「そうよね」
「あれはかば焼きが冷えない様にね」
「ご飯で隠したの」
「そうだっていうわ」
「そうだったのね」
「自由軒のカレーも」
これもというのだ。
「冷えない様にね」
「混ぜてたの」
「最初からね」
「そうだったのね」
「昔はね」
織田作之助が生きていた頃はというのだ。
「今より技術も拙くて」
「それでよね」
「そう、それでね」
その為にというのだ。
「冷えたものをね」
「お客さんに出さない為に」
「温かいものを食べてもらう為に」
「そうした工夫をしてたのね」
「そうだったのよ」
「昔の技術ね」
「そう、調理のね」
「やっぱりそれってあるわね」
夜空もそれはと頷いた。
「技術って」
「今と昔じゃね」
「昭和の頃はね」
「それも十年代よ」
昭和のというのだ。
「もう今と比べると」
「かなり違うわね」
「そうよ」
まさにというのだ。
「本当にね」
「そのことを考えないといけないわね」
「当時はね」
昭和十年代はというのだ。
「電気のキッチンもなくて自動炊飯器もね」
「なかったわね」
「そうよ、ご飯もね」
これもというのだ。
「そんなので」
「竈とかあったわね」
「というかお水も」
これもというのだ。
「大阪のど真ん中だから水道あったと思うけれど」
「ああ、お水もね」
「違ったしね」
「そうだったわね」
「もう何かとね」
当時と今はというのだ。
「違っていたのよ」
「そうよね」
「だからね」
それでというのだ。
「その頃の工夫でね」
「鰻丼もそうしたのね」
「そう、そしてね」
そうしてというのだ。
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