第一章
[2]次話
十年後再会すると
その時彼の髪の毛はなかった、四十になると急になくなった。サラリーマンの中西孝道は笑って言った。大きな垂れ目で大きな口を持つ大柄で太った男だ。
「代々こうだからね」
「開き直ってるな、俺だとな」
同期入社の高部道彦はどうかという顔で返した、痩せていて背は一七〇位で大きなギョロ目である。唇は小さく黒髪はかなり多い。
「そうなるとな」
「嫌かい?」
「禿げるのはな」
それはというのだ。
「何があってもな」
「嫌かい?」
「嫌に決まってるだろ」
それこそというのだ。
「髪の毛は長い友だよ」
「僕にもあるよ」
「頭の左右にはな」
「だったらよくないから」
「一本もないよりはか」
「うん、こうした人多いしね」
髪の毛のない人はというのだ。
「君これからロンドン支社の赴任するけれど」
「イギリスもか」
「ほら、王太子さんがね」
この人がというのだ。
「イケメンだけれどね」
「きたな、あの人」
「若い頃からね」
「二十代からどんどんきてな」
そうなりというのだ。
「三十になった頃にはな」
「なくなったね」
「お母さん譲りの髪の毛でな」
顔だけでなくというのだ。
「大丈夫だと思ったら」
「三十になる頃にはな」
「見事にね」
こう言っていいまでにというのだ。
「いっちゃったね」
「そうだな」
「イギリスもそうで阪神だってね」
「俺達の愛するか」
「岡田監督若い頃はあったのに」
「前に監督だった頃から次第にな」
「そして今はね」
どうかというと。
「なくなってるね」
「あの人も六十代後半だしな」
「そうそう、お爺さんになるとね」
それこそというのだ。
「殆どの人がなくなるし」
「それが早いだけか」
「そうじゃないかな」
「割り切るな」
「僕は代々だしね」
「それでか」
「まあイギリス王家もね」
今話に出したこの家もというのだ。
「お祖父さんがそうで」
「エジンベア公だな」
「お父さんもね」
「今の王様、チャールズ三世もな」
「王太子さんもで他の人も結構だし」
「ヘンリー王子もな」
何かと話題のこの人もというのだ。
「きてるな」
「そうだね」
「何でも遺伝とあの髪の質と生え際でな」
その三つでというのだ。
「わかる人はわかったらしいな」
「なくなるって」
「実際にそうなってるしな」
「そうしたお家ってことだね」
「そうだな、しかし俺は絶対に嫌だからな」
高部は中西に強い声で言った。
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