第134話『ミラーハウス』
[1/7]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
突如として現れた黒フードの男による、目も眩むような虹色の閃光。その光は教室全体を覆い尽くし、そこにいた全員の視界を奪う。
そして少しの時が経って光が収まり、恐る恐る目を開いてみると、そこには──
「何だこれ……鏡?」
まぶたを開いてすぐに、その異常に気づいた。目の前に映る自分の姿。左右も、背後も、頭上も、足元も、全て自分が映っている。
──そう、壁、床、天井と、人以外の見る物全てが鏡のように景色を反射していたのだ。
どうやら先程の発光は、身体に影響を与えるものではなく、あくまで外観を変化させるものだったようだ。しかし不思議なことに、机や椅子、厨房そのものや教室の装飾などは全て忽然と消えてしまっていた。
残されたのは人々と全面鏡張りの世界のみ。窓もなくなり、外の様子はわからない。
「はっ、結月! 大丈夫?!」
「ボクは大丈夫! でもさっきの人がいない!」
「……ホントだ。逃げられた?」
攻撃ではなかったということで、晴登や他の生徒達、一番近くで光を受けた結月ですら無事である。
よって、この事態を引き起こした張本人は発光と共に姿を晦まし、謎だけを残していってしまった。
しかし、数少ないヒントの中で考えられるのは──
「スサノオの襲撃……!」
アーサーから話を聞いた直後だから、最悪の想定をしてしまう。根拠はさっきの男が雨男のような黒いフードを身につけていたから……だけではあるが、晴登はもう確信していた。(雨男にちなんで『鏡男』とでも呼ぼうか。)
もし違ったとしても、原因が魔術とわかっているのなら、魔術部が動かなくてどうする。
「皆さん、落ち着いてください!」
横目で廊下の様子を窺うと、概ね教室と同じように鏡張りになっており、パニックを起こした人達が逃げ惑っていた。
教室の中もざわついており、このままではいけないと思い、晴登は声を上げた。すると、弾かれたように全員が晴登の方を向く。注目されるのは苦手だが、魔術部部長として今できることは……。
「不測の事態が発生しました! 皆さん、教室から出ないでください! 俺が原因を調査してきます! 結月、ここは任せていい?」
「わかった!」
一息で言い切った後、晴登は教室を飛び出した。
待機することもできたが、仮にこれがスサノオの襲撃であればじっとなんてしていられない。まずは学校の様子を探ることにする。
しかし、廊下はごった返す人で大渋滞。おまけにその様子が鏡に無限反射され、前も後ろも、上下の判別すらもままならない。
「まるでミラーハウスだな」
遊園地なんかによくあるアトラクション。今の状況はそれにとても似ている。
違う点を挙げれば、入場している人が多す
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ