第二章
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「紅茶もね」
「飲むのね」
「そうしましょう」
「それならね」
「いや、うちも変わったね」
働いている工場から帰ってきている父も言った。
「こうしてケーキが食べられるなんて」
「そうよね」
娘は笑顔で応えた。
「私が小さい頃なんか」
「戦争が終わったばかりでね」
「酷いものだったよ」
「お父さんも兵隊さんになったわね」
「幸い内地だったけれどね」
いた場所はというのだ。
「九州の方でね。それで部隊は違ったけれど」
「川上さんがいて」
「いや、あの人は評判が悪くてね」
それでというのだ。
「お父さんも聞いてたけれど」
「何でも階級が高い人には笑っていて」
「低いと辛くあたってね」
「そんな人だったのよね」
「恵美達はそんな人になってはいけないよ」
川上哲治の様なというのだ。
「あの人は上下関係ばかり見てね」
「偉い人には諂って」
「自分より下だと見下してね」
「使い捨てにするのね」
「凄く冷たくてね」
そうした人間でというのだ。
「どうも巨人は実は昔のスター選手がどんどん追い出されようとしているんだ」
「そうなのね」
「長嶋さんが人気だけれど」
今はというのだ。
「それでもね」
「川上さんがいて」
「多分あの人は次の監督だけれど」
「あの人が監督になったら」
「チームは強くなってもね」
それでもというのだ。
「よくないよ」
「そうなのね」
「うん、あの人のことも聞いたけれど」
それでもというのだ。
「無事に帰ってこれたし」
「よかったのね」
「うん、そして今こうして」
「ケーキを食べられて」
「幸せだよ、じゃあ皆で食べて」
父は家族に話した。
「楽しもう」
「それじゃあね」
恵美は笑顔で応えた、他の家族もだった。
そうして食べたケーキはこのうえなく美味く恵美はこの時から給料日になると家族にケーキを買って一緒に食べる様になった。
それはずっと続き。
昭和が終わり平成、令和になってもだった。
恵美は何かあるとケーキを買った、そして家に来た曾孫の一人にそのケーキを出して自分も食べつつ話した。
「美味しいわね」
「うん、ひいお祖母ちゃん私が来ると絶対にケーキ食べさせてくれるわね」
「他の子達にもね」
「ケーキ好きなのね」
「大好きよ、ずっと昔から」
「ずっと?」
「ひいお祖母ちゃんが若い頃からよ」
「その頃からなの」
「そう、高校を卒業して働く様になってから」
その時からというのだ。
「大好きよ、あの頃も美味しかったけれど」
「今もなのね」
「大好きよ、今はケーキは何処でも売ってるけれど」
昭和のあの頃と違ってというのだ。
「今も美味しいわ」
「そうなのね」
「ええ、とてもね」
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