第三話
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波長を操って戦うという変わった能力を持つらしいが……かなりやっかいな人物なんだとの報告だ」
「了解しました」
スコープに付いた十字型の照準を、ゆっくりと月兎の頭に合わせて行く。それに合わせて、引き金に添えていた指の力が少しずつ強くなっていった。
早く昼ご飯を食べようと帰っていた三人だったが、なぜか一人だけ浮かない顔をしていた。
(しっかし……なんか妙なんだよな。何もないってのは……)
幽々子が永遠亭強襲作戦の事を話してからほぼ一週間くらいは経過している。それにも関らず、革命軍は大きな動きを見せてはいないことに妹紅は不安を抱いていた。
迷いの竹林を熟知している妹紅は、他の誰よりも多く見張りに出向いていた。しかしいつも見つけていたのは、起動した後の罠ばかり。いい加減妹紅たちの前に出てきてもいいはずだ。だが革命軍はまだ目の前に現れていない。もしかすればただ油断させたいだけなのかもしれない。妹紅は次第にそう考えるようになっていった。
(……考えても仕方ないか。あいつらが出てこない限り、私達も大きな行動は――)
そう考えながら振り返った妹紅は、何かを察したかのように目を見開いていた。
視界に入りこんできたのは、なぜか光を大きく反射する物体だった。一瞬てゐの作った罠かと考えたが、彼女の作る罠にしては分かりやすい。だが目を凝らして見ると、かすかだが何か生きている者がいるのか、地面が少し動いていた。
(……まさか!!)
妹紅は無我夢中で鈴仙とてゐの体を掴んだ。
「鈴仙! てゐ! こっちだ!」
「えっちょ!?」
「妹紅さん!?」
妹紅は二人をかばうようにしながら、思いっきり右に飛んだ。
(くそっ! とりあえず撃つしかない!)
すっかり狙いを定めていたが、急に進行方向を変えられ完全にくるってしまった。急いで狙い直すが、このままでは伏せられて狙えなくなってしまう。当たれば儲けものと考えながら男は引き金を引いた。
大きな轟音とともに一発の弾が放出される。弾は竹林の中を駆け抜けるように飛び、少し竹にかすりながらも起動を変えずに飛び続ける。その先にはある少女のわき腹が捕えられていた。
「う……ゴフッ」
弾丸は不老不死の少女の肉体を抉るように貫いて行く。少女はそのまま吐血しながら倒れこんでいった。
「妹紅さん!!」
妹紅の右わき腹には一センチほどの穴が出来あがっていた。穴から血液が大量に出始めており、弾丸も貫通していないようだ。もしも不老不死である彼女でなければ、致命傷になっていたかもしれない。
(くそっ……もう少し反応がはやかったら……)
太い針で突かれるような痛みに耐えながら、妹紅はぞろぞろと動き始める兵士達を睨んでいた。
「くそっ! やつら気づきましたよ! 弾丸は第一目標ではなく第三目標に的中!」
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