第八十七部第二章 膠着状態に入りその五十
[8]前話 [2]次話
「だがそこでだ」
「王も失い」
「それで、でしたね」
「東ゴート族は余計に窮地に陥り」
「そうしてでしたね」
「後の滅亡に直結した」
そうなったというのだ。
「そして中国でも明王朝の時だった」
「はい、土木の変ですね」
「あの時でしたね」
「皇帝が親征しましたが」
「それでもでしたね」
「語るに落ちた失態を繰り返してだ」
明軍は五十万を数えた、だが上層部もっと言えば専横を極めていた宦官の稚拙な指揮により悪戯に戦力を消耗していったのだ。
「そうしてだ」
「敗北しましたね」
「五十万の大軍を壊滅させ」
「皇帝も敵の捕虜になり」
「明は存続の危機を迎えました」
「あれは今も笑いものになっている」
その土木の変で皇帝が捕虜になったことはだ。
「それを見てもな」
「どうしてもですね」
「国家元首自らの出陣はですね」
「時を選び」
「かつ問題もありますね」
「土木の変では明は滅びなかった」
幸い次の皇帝をすぐに立て名臣の活躍と火器を駆使した軍の奮戦があってだ、北の遊牧民族を退けたのだ。
「そうなった、だがな」
「それでもですね」
「明が滅亡の危機に陥ったのは事実」
「左様ですね」
「それを見ればだ」
やはりというのだ。
「国家元首は普段はだ」
「戦場に出ず」
「そうしてですね」
「国全体の政にあたる」
「そうすべきですね」
「そうだ」
まさにというのだ。
「そうすべきだ」
「左様ですね」
「それではですね」
「閣下としても」
「今は必要だからであり」
「普段は」
「必要でないとだ」
さもないと、というのだ。
「出るべきでないとな」
「お考えですか」
「そのお考えに至りますか」
「そうですか」
「今はな、国政を担いつつだ」
そしてというのだ。
「軍を直接指揮するのはな」
「問題がある」
「個人が行うには」
「左様ですね」
「人間は人間だ」
アッディーンは言った。
「それ以上のものではないからな」
「出来ることには限度がありますね」
「どうしても」
「幾ら有能でもです」
「人間は人間なので」
「全てのことが出来るなぞだ」
それこそというのだ。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ