第一章
[2]次話
幼稚園に来た高級車
働いている幼稚園に児童達の送り迎えのバスから出てだった。
その幼稚園で先生をしている大西真弓赤がかった癖のある胸を覆う位の長さの髪の毛に切れ長の二重の長い睫毛の目にすっきりした顎と高い鼻を持つ色白で一五八位の背ですらりとしたスタイルの彼女は幼稚園の前に泊っている車を見て驚いた。
「ベンツですよね」
「そうだね」
運転手の相模幸信が応えた、還暦を越えた穏やかな顔の男である。
「あれは」
「ベンツで子供さんを送ったんでしょうか」
「やっぱりそうだね」
「ベンツというと」
大西は真顔で言った。
「昔は」
「もうヤクザ屋さんが乗るものだったよ」
「そうですよね」
「だからね」
それが為にというのだ。
「皆避けていたよ」
「そうでしたね」
「けれどそれは昔の話で」
そうであってというのだ。
「今はね」
「そんなことはないですね」
「そうだよ、けれど高いから」
「今もそれは変わらないですね」
「だからね」
「ベンツに乗っている人は」
まさにというのだった。
「お金持ちですね」
「そうなるね」
「一体どんな人か」
かなり真剣にだ、大西は言った。
「お金持ちといっても色々で」
「いいお仕事していたらいいけれどね」
「ヤクザ屋さんでなくても」
「悪いお仕事してるならね」
「近寄りたくないですね、お子さんは違っても」
「親御さんとお子さんは別だってことはね」
相模もそのことは話した。
「注意しないとね」
「お子さんには誰でも公平に親身に」
大西は幼稚園の先生そして自分自身の倫理観からこう言った。
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