6.降谷さんの激昂──phase:K.H.
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----------------------------------- case : Furuya
翌日、汀を伴って登庁すると、先輩は目を丸くしたあと吹き出した。
そのまま、話をするのによく貸し切っていた小さな会議室に引っ張られる。
「何だ? 現行犯逮捕でもしてきたのか?」
「彼女は保護対象です。逮捕なんかしません」
先輩はまだくすくすと笑っている。汀がおろおろしているじゃないですか。
「……先輩、これを見てください」
僕は抱えていたダンボール箱を先輩の前に置いた。
おう、と先輩は蓋を開けて中身を検め始める。
笑いを引きずっていた先輩の顔が、途端に強張った。
「……これは」
「彼女は取り引き相手とのやり取りの中で気になったことをメモしていたんだそうです。そして、処分するようにと言われた資料を処分せず保存していた」
「ホォー……」
先輩は顎のあたりに緩く握ったこぶしを当てて、考え込んだ。
「確保したあの男は口を割りそうですか?」
「今のところ有益な情報は何も。いかにも悪い奴っぽく悪態をついているばかりだ」
はは、と、自分の口から呆れたような小さな笑いが漏れた。
「じゃあ、これらはとても重要な手掛かりになりますね」
「ハハ。とんでもなく忙しくなるな」
先輩は肩をすくめた。
そして。
「んで、こんなところに連れてきたからには……彼女にはバレたのか」
「違います。降谷さんは最後まで『秋本さん』でした。私にはとても分かりませんでした」
汀が即答した。なんだか昨日から、彼女はすごく強い目をするようになった気がする。
……一日で色々ありすぎたな。
「ずいぶんなお墨付きだが……バレバレじゃないか……」
先輩が呆れたような溜め息をついた。でも少しげんなりしていそうではあれど、笑っている。
「私のせいです。私がおかしなことをしたんです」
「おかしなこと?」
僕が詳細は言うなと言った通りに、彼女はそれだけしか言わなかった。
先輩が眉をひそめている。笑みは完全に引っ込んでいた。
「先輩、僕は彼女を僕の『協力者』にしたいんです。そして彼女になにができるのかは……どんな仲間であろうと明かせません。彼女の身に危険が及ぶ」
「……ホォー」
先輩は真剣な顔で目を細め、思案する素振りを見せた。
「昨日、僕の他にも彼女を救出しに向かった『仲間』がいたでしょう? あの人に詳細は語るなと言った上で聞いてみてください。彼は彼女に助けられている」
先輩の目が光った気がした。
「少し席を外す」
その後少しして戻ってきた先輩は、やはり楽しそうに笑っていた。
「……なんだか楽しいことが起きてるみたいだ
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