5.降谷さんの動揺。
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やるだけだろう、って諦める。
ただ彼女はまだぼんやりしているのか、反応がない。
「……汀」
彼女は汀さんというのか。けれどゼロが名を呼んでも反応がない。
「汀」
やっぱり、反応がない。
ゼロは小さく嘆息した。
そして。
……あの。あのさ。
こっちからじゃ見えないんだけど、その姿勢はやっぱり、その……。
そわそわしたのはそういう雰囲気をオレが無意識に察知してたからなんだろうか。
少しして、ぴくりと彼女の身体が強張った。
「……お前は、人間だ」
彼女が息を詰まらせたのが分かった。
「これからどうするかを話す。だから、聞け」
少しだけ間が空いて。
「……は、い」
彼女の小さな返答が聞こえた。
ゼロが彼女としっかり目線を合わせる。
「ああいうことができるのをお前自身が知ったのは今日が初めてなんだろう?」
「……はい。だけど……こういうことができるの自体知らなかったのは、『できるようになった原因』があるとしたら、忘れてるわけで……本当に初めてなのか、自分では分からないです……」
あんなに呆然としてたのに、色々考えてたんだな。
「……もしかして、誘拐とか痴漢とかされそうになった時、相手を殺してたり、するのかな」
震える声でそう言って、彼女は自分を抱きしめるようにして縮こまっていた。
結構綺麗な子だから、そういう被害に遭いかけたのは事実なんだろう。……それらを『だから』とかで繋ぎたくないけどな。
しかしそうか、ここまで怖がっているのは……そういう可能性を考えてしまったせいなのか。
「そんなことしてたら事件になってる。お前のあれはそう静かなものじゃなかったしな」
お前のあれ。ゼロは彼女が実際に発砲した所を見たことがあるんだろう。
「誘拐や拉致等が成立してしまっても、お前はすぐに助けられた記録しかない。その能力の原因にあたりそうなものを覚えていないってことは、知らないうちに身体を弄られたとかじゃなくて、生まれ持った『ギフト』だろう。今まで銃なんて出てこなかったのは、相手が何らの犯人であろうと、誰かを本当の意味で傷つけようなんて思わなかったからだろう……お前のことだから」
本当の意味……? ゼロは彼女のことをよく知ってるんだろうか。
しかし彼女やっぱ誘拐とかの被害に結構遭ってるんだな……不憫だ……。
「……そんな、都合のいいことを、言ってもらえるような、存在じゃ」
「お前は、人間だ」
「……っ」
「そしてその力が他人を傷つけることを怖がっている。それだけで充分だろう」
いい加減聞き分けろ、面倒くさい、話を先に進めるぞ、とゼロは言うが、その優しさはオレにも、そしてきっと彼女
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