第五章
44.侵攻
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訳ありません」
そう絞り出すように言ったフォルに対し、すぐに声をかけたのは、祈祷師や魔術師たちを選抜するにあたって尽力した祈祷師ケイラスだった。
「可能性がある以上はやらなければならない。また何か新たな術式が見つかれば挑戦すべきだ」
さらにこうも付け加えた。
「個人的には、今回は意外な結果とは思っていない。容易な召喚が見込めるものであるならば、ハーゴン様がいかなる犠牲を払ってでも準備を整え、生前に実行していただろうからな」
フォルの隣で座っていた白い少女も、コクリとうなずいている。
老アークデーモンも、消沈気味の空気を吹き飛ばすように笑いながら言った。
「まあ、今日は残念会じゃな。酒できれいサッパリといこうかのう」
しかし、その直後であった。
「フォルはいるか」
声は礼拝堂の出入り口からだった。現れたのは、黄白色の体毛を生やした猿のような体に、羽と長い尻尾。デビルロードだ。
召喚の儀が終わったという連絡は、まだ神殿の外に回していない。よほどの緊急事態でもない限り神殿は立ち入り禁止――そうなっていたはずだったため、ほどけかけていた場の空気が、ふたたび緊張した。
「どうされましたか?」
「敵だ。人間の兵士たちがロンダルキアの洞窟内に入り、ここを目指して進んでいる。洞窟にいたバーサーカーらの同志は避難し、こちらに合流するために移動中だ」
「……!」
フォルは絶句した。想定よりも早かったためだ。
「やれやれ。ローレシアもサマルトリアも、ガッカリしている暇すら与えてくれぬようじゃな」
「いや、それがだな」
「ん、どうしたんじゃ」
「攻めてきたのはローレシア、サマルトリアだけではない。他にペルポイ、デルコンダル、ラダトーム、ベラヌール、ルプガナと思われる紋章を付けた兵士が確認されている」
「なんじゃと……」
集まっていた祈祷師や魔術師からもざわめきが起こる。
「数は推測すら不可能なほどらしい。全世界がロトの旗のもとに結集したようだ」
それは、この場の同志全員が奈落の底に落とされるような、絶望的な宣告だった。
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