4.降谷さんの困惑。
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管理者が見れば丸分かりになるシステムだ。何本借りたのかと不思議がられそうだが、各種の練習がしたかったで通るくらいのものだ。
「扱いが分かるかどうかを見る。まずはこれだ」
と、示したのだが。
「……っ!」
彼女はまともに持ち上げられなかった。
「……は」
「……重い、です……」
へにゃりと申し訳なさそうに眉尻を下げて彼女が俯く。
そういえば、あんな程度のダンボール箱で弱音を吐いていたなと思い出す。
あんなモノを易々と構えていたのだからまさかこうなるとは思っていなかった。まずは握力や筋力を測定しておくべきだったか。
しかし既に不可思議なことばかり起きている現状、アレがあのナリでものすごい軽量だったなんてことがないとは言えない。
ふう、と小さくため息をついて僕は借りたものたちを全て返した。あの調子ではどれであろうが持ち上げられないだろう。
「じゃあ、もう一つだけ」
僕は懐から愛用のP7M8を取り出して彼女に握らせた。やはりこれでさえ重そうに見える。しかし、確かめなければいけない。
彼女はぽかんとしてP7M8と僕の顔とで視線を往復させている。
「……構えろ」
(まるでなってない……)
しかしフリの可能性を指摘されてもおかしくない。
僕は彼女の構えを少しずつ修正していく。
形だけはそれっぽくなった。僕からすればどうみても『形だけ』は、だ。
そのことに少し居たたまれなさも覚えながら、聞く。
言われて彼女は恐る恐る、懸命な様子で前方に向けてP7M8を持ち上げた。しかし。
「ここからどうすれば撃てるか、分かるか」
「え、えと……安全装置があるんですっけ……?」
ドラマなどでそのことを知っている人間はかなりの数になるだろう。だがそれはどれもこれも同じものじゃない。
「どれだか分かるか」
ゴーグルであまり見えないが、困り切った顔をしている想像がつく。
ものによって違うものだから、これを知らないからと言ってまだ無罪放免はしてやれない。
「……ここを握り込んで、押し込んで維持」
彼女の指の上からそれをやってやるが、たったそんなことでさえ潰してしまいそうな細さにますます居たたまれなくなる。
カチリ、と、音がした。
「それからフレームをスライドして装填する」
フレームをカシャリと音がするまで引いて離すと、カチンと音を立てて元に戻った。
「リアサイトの間にフロントサイトがくるようにして的に照準を合わせる。どういうことか分かるな」
「はい。なるほど、です」
指でひとつづつ示しながら聞くと、彼女は小さく頷いた。こういう察しは良いんだな。
しかりやはり一連の動作は何もかもがぎこちない。
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