4.降谷さんの困惑。
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リティの関係でノート型を持ち歩いたりはしない、か」
お一人で納得したように呟いているけれど、その通りなんだと思います。私がそうしてるのではなく決まりです。……と、そこまで思って。
「……あ」
「どうした?」
「あの……」
少しお伝えするのが怖い。でも悪いことをしたのは私だ。
「取り引き相手とのやりとりで、何だろうこれって謎だったことのメモとか、見たら処分しろって言われたアナログな資料とか、とっといてあるんですけど……要りませんか?」
安室さんは少しだけ目を見張った。そしてふっと小さく苦笑する。
ふわっと私の頭に手のひらが置かれて、少しだけ撫でられた。今度は私が目を見張る。
「本当、変なところばかりしっかりしてるな」
「へ、変な、ところ……」
しどろもどろしてしまうけど、私が和んでもいいとはあんまり思えないので、早々にこれですと言ってPCデスクの側の本棚の一番下からダンボールをひと箱ひきずり出す。
「あ……少し、重いので……いったん持っていかせてくださ」
私が全部言い終わる前に安室さんはひょいっと持ち上げた。……片手で。
「存在しないんじゃないかってくらい軽い。他には?」
思わずぽかんと見つめてしまいました。時間を取ってしまっている場合じゃないと気を取り直す。
「あとは服とか歯ブラシとかを、キャリーケースに入れようと思います。以上です」
「そうか。じゃあ僕はいったんこれを車に運ぶ」
「はい」
多分気を使って外してくれたのかなと思ったから、先に下着とかのあんまりお目に入れたくないものを詰めた。
少しして戻ってきた安室さんは、整頓しながら詰めようとして並べていたシャンプーやトリートメント等を見て小さく首を傾げていた。
「消耗品はうちにあるもので良くないか? 種類にこだわりが?」
安室さんのお家にあったのって性別問わず使える質の良いやつだった気がする。
「特にないですけど……なんか、悪いなって……」
「そのあたりは気にするな。そういうのより、普段使いのマグカップとか箸とかはないのか? そういうのは自分のものを使いたいって人は結構いると思うんだが」
「あ、確かに……思い至りませんでした。ありがとうございます」
そして素直に従ったほうがいいと思い消耗品はしまいなおして他の物を詰めていると、安室さんがぽつりと言った。
「……僕について何か聞かないのか」
「……」
さすがに、何か気づいていないとおかしい、よね。
私は少し考えながら俯いた。
「……本当は客引きさんじゃないんじゃないかな、とは思いました。けど……私が不穏分子なうちは、明かさないでください。聞く気も、ありません」
「……そうか」
……
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