3.降谷さんの憂悶。
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だもの……。
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「……あなたは」
突然視界に現れた長身の男に、『兄貴』と呼ばれていた彼は警戒を強めた。面識はある。だが、安全ではない。
「ずいぶん傷だらけじゃぁねェか。今日はいいモン持ってきてくれるんじゃなかったか? 手ぶらのようだが」
「ハハ、チンピラみたいなのに邪魔されましてね。離脱するので手一杯でした。……おおかた、あの研究者の男つれとそのダチでしょう。たまったものじゃない」
「ホォーウ」
「またいいのが手に入ったらご連絡しますよ。今日はこのザマです、情けない」
「本当に」
ジャキっと凶悪な音がした。
銃口がひたりと彼を狙う。
「情けねェ限りだな」
「……ッ!」
「モノが手に入ってもいないのに呼びつけて、あまつさえチンピラの情夫に邪魔されただァ? そんなバカどもに、『次』はねェ」
「ヒ、ヒィッ!」
彼は一目散に逃げようとしたが、人の脚でそれは叶わない。
パァンと、乾いた音が響いた。
そこに。
「……ッ!」
靴底が地を削る音がする。金髪でスーツを着た男がそこにいた。右手には、拳銃。
(……件のチンピラか)
「……残念だったな。お前が追って来た奴ァ俺が殺っちまったよ」
「……そいつは、僕の女に手を出したんです」
「ホォー。たったそれだけでチャカ持って追い掛けて来たのか」
ぴくりと金髪の男が反応した気がした。
「……それだけ? 何を理由にしようが人の勝手でしょう」
その目が凍えるような冷気を湛えているのを、何となく男は気に入った。
金髪の彼のほうは、目の前にいる誰とも知らぬ男に言葉を投げつける。
「……よくも、横取りしてくれましたね」
そう言ってギリっと男を睨んだ彼の目は、膨大な殺意に満ちていた。
そこまで聞いて男は、ハッと鼻で嗤った。
「遅ェのが悪ィ。ちんたらしてんなよ」
しかし男はわざわざ相手をしてやる価値をこの金髪の彼に見出していた。
(……だが、どうにも青臭ェ)
ギリ、と金髪は拳銃を男に向けてきた。男はニヤリと嗤う。
「……おいガキ。今はまだ時じゃねえ」
「は?」
「お前がただのチンピラじゃなくなったら、飼ってやってもいい。例えば……そういうのを全部片づけてみな」
男が最早動かない死体を指さすと、金髪の彼はこれ以上ない渋面を浮かべた。しかし手に構える銃から、少しずつ力が抜かれていくのが分かる。やがて彼は、銃を下ろした。
「……意味が分かりません」
「分からねェなら、それまでだ」
すいっと男は背を見せて去っていく。その背
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