3.降谷さんの憂悶。
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もう一人のかたが抑えているのが見えたけど──。
『兄貴』が左手で銃を取り出そうとしているのが見えた。撃たれているっぽいのはもう一人と同じく右肩。両利きか左利きだったのかななんてぼんやりと認識する。
このままじゃだめだ。何とか、しなければ。
そんな一心でただただ身体を動かした。
何ができるとも思っていなかったのに私の手にはいつの間にか銃が握られていて、そしてそれは妙に手に馴染んだ。
キューンというエネルギー収束音が1.44秒。その後パシュンという発射音と比較的重い着弾音が響く。
ターゲットサークルが示していた『兄貴』の左肩にきちんと命中したらしい。
『兄貴』は銃を取り落としていた。
その場の全てに何が起こったのか分からないというふうな沈黙が訪れる。
私も何が起こったのか分からない。
一番最初に動き出したのは『兄貴』。両肩を撃たれているのにそれを感じさせないスピードで走り去って行く。
私は茫然と手の中に現れたモノを見つめた。
ガレアン・アンティークリボルバー。でも多分これは幻影で、中身は別物なのだろう。私はこのデザインが気に入っていて、ずっと武具投影をしていた記憶がある。
(──ナニコレ……いやどう見ても前世でハマってたオンラインゲームのやつだよね)
内心混乱しきりの私の肩がガッチリ強く掴まれて、めちゃくちゃびっくりして私は飛び上がった。
見上げるとものすごく怖い顔をした安室さんがいた。
いや本当にすっごく怖い!!!! 逃げたい!!! でもゴリラさんから逃げられるわけがないです。知ってた。
無意識に身体が震え始める。こ、怖い、怖い、怖い!!
「……汀、それは、何だ」
ゆっくりと吐き出されたその声はものすごく低かった。ドスが利いてさえいる。
けれど怖すぎて私は声が出なかった。何か言わないといけないのは分かっているのに、はくはくと口だけが動く。
「汀!」
一喝でますますびくっと身を縮める。
怖い、怖い──。
舌打ちが聞こえる。
こ、怖い……!
「……あとで話を聞かせろ。絶対だ。ここを動く──」
彼が動くな、と言い終わる前に、私の手の中の銃が溶けるように光になって霧散していった。
「……は?」
「……え……?」
私も、わけが、わからないです!!!!
「とにかく、動くな! ……彼女を押さえておいてください!!」
「は、はい!」
彼が仲間だろう人にそう叫ぶとその人がこちらに走って来て私の腕を掴む。
安室さんはそれを確認すると、逃げた男を追うのかすごい速さで走って行った。
し、締め上げられたりしなくてよかった。痛そう
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