3.降谷さんの憂悶。
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古びたプレハブだ。慎重に足音と気配を殺し、周囲を警戒しながら近づいていく。
倉庫街の中、廃コンテナだのよくわからない荷箱だのがプレハブ周囲のあちこちに積まれていて、身を隠すのに困らないのは幸いか。見通しが悪くて当たり前だ。
「座標には怪しいプレハブ。周りに色々積まれている」
『了か──』
仲間の応答の声が終わる前に。
-?でも、この通り、データはもう燃えちゃいました。私は取り引きできません……しません?
-?……ハァ??
不穏でしかない音声が聴こえる──。
-?じゃあ、もう姉さん自体連れてくわ、兄貴?
ガタガタと椅子を引くような音がした。
-?面倒な……?
抵抗したんだろう、固い音が少しだけ続く。
なあ、嫌だったらきちんと抵抗できるんじゃないか。怖いだろうに、声も出さずに。
「保護対象が拉致される! 急げ!」
『──ッ』
間に合え、間に合え、プレハブから出てきた瞬間の隙を突けなければあとは──。
『見えたッ、中から人影──大・中・小、中が小を引いてる。どうする! 私はまだ距離──』
「武装が分からない。小は保護対象」
『中は拳銃所持の情報アリ。大は不明』
ッ厄介な!
しかしもう仲間の距離は詰まっているはずだ。
「中を持つ」
『了解、大を持つ。当方距離──』
「了解!」
同時に仕掛けられる距離だ。
資料で『中』(彼女の取り引き相手の男だ)は右利きだと知っているが、『大』(『兄貴』と呼ばれている男)が不明なのは痛い。
とはいえ足を狙えば、武器を扱える可能性の高い腕が自由なまま。肩を狙うのが妥当だろう。
『私は肩を狙い、発砲後組みつく。カウント3。……行くぞ、3・2・1』
仲間がわざわざ『私は』と言ったあたりお前も自分の思う通りに、ということなのかもしれない。
走り出して二発ほぼ同時に着弾したのを視界に入れながら、右肩を抑える『中』に取りつく。こちらは難なく無効化して手錠にかける。
僕は不安の残る『大』に向けて銃を構え──。
----------------------------------- case : Reincarnator
銃声は一つだったけれど、弾けたのはふたつ見えた。きっと二人いて、タイミングを合わせて撃ったから音は一つに聞こえたんだろうね。すごいなぁ、息ぴったり。
場所なんか伝えてないのに助けに来てくれたんだ。やっぱりいつの間にか追跡アプリをインストールしてくれてたのかな。そして無謀なことをしたのにこうして助けに来てくれたことに申し訳なさをおぼえた。
右肩を撃たれた取り引き相手の男を安室さんが抑えているのと、兄貴と呼ばれていた男を
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