2.降谷さんの刻苦。
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が上がりすぎて喋れそうにない間を突くつもりはもちろんないから、少しの間名を呼びながら頬を撫でていた。
「…………なん、で……」
やっとのことで彼女が言ったのはそんな掠れた音だった。
「……言ったろ。きみが好きだ。好きな奴を守りたいと思って何が悪い」
「っ……」
実際そういうのは立派な理由になるものだ。
彼女がますますぼろぼろに泣き始めるから、僕はしばらくそれをへたにこすらないよう注意しながら拭い続けることにした。
やがてぽつぽつと彼女が語ってくれたことによると、やはり積極的に組織に協力しているようではないらしく、ひとまず胸をなでおろす。
研究が認められないことと思うように進まないことでストレスをためて飲んでいた彼女に、例の男は「もっと活躍できるところで研究しないか」と誘って来たらしい。
誰かに悩みをこぼしたこともない彼女がそんな声をかけられたのは、たまたま白衣が鞄からふんわりはみ出てしまっていたからのようだ。
『姉さんこれ白衣か? いい話があるぜ』
この国では研究者の待遇があまりよくない。だから恐らく『それっぽい人間』はいつでも狙われているのだろう。ちょっとはみ出たくらいで白衣と分かるのもずいぶん手慣れていそうだ。鎌掛けの可能性もあるが。
しかも東都大学のキャンパスに近いとなれば、優秀な人材である可能性が高い。
最初は彼女も相手にしなかったらしいのだが、覚えられてしまったのか幾度も話しかけられて、そして少しずつ話を引き出され、その気になっていってしまったらしい。
サンプルにできるような彼女が開発した薬のデータをもらいにくると言われてから、彼女はふと、自分は大変なことをしているのではないかと思い始めたそうだ。
けれど、誰にも相談ができないところまできてしまっていた。
もう少し研究を詰めたくなったなどとしてデータを渡すのを渋っているのが現在、だそうだ。
……本当にギリギリだった。
僕は彼女をきゅっと抱きしめる。
「……よく、言ってくれた」
「……っ、……もしかして、何かする気ですか? 危ないことをしに行かないでくださ……」
「しないさ。きみがしないならね」
「……っ?!」
「きみはもうそいつに関わるな」
「で、でも、飲んでて気付いたら彼も店に居るって状況です。私、見張られてるんじゃ」
「じゃあ、きみが酒を飲みたくなったらここに連れて来る。街には行かせない」
「……ここ、は……」
「俺の家だ」
彼女は目を丸くした。
「そ、そうですか……」
しどろもどろしている彼女に思わず小さく苦笑する。
「何だと思ってたの」
「な、何にも……全然、あたま、はたらかなくて……私、男のひと
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