2.降谷さんの刻苦。
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うだったりな彼女を笑顔で黙らせて、色々と世話を焼く。
その後も『つらいだろうから絶対一人で動かさない』というポーズを固持し、最終的にベッドの上でブランケットに巻いただけにして腕の中に収める。
「……あの、服を……」
「いやだ」
「ええ……!?」
彼女はまだ堕ちてくれていないから、不安の素を残しておかなければいけない。吊り橋効果やストックホルム症候群に近い演出を期待する。
「……お腹空いてない?」
「……ッ」
そう言いながらすっと腹を撫でると、彼女は分かりやすく怯えた。
「そ、そんな気分、じゃ」
「そう」
お言葉に甘えて空腹は考えず、じっと軽く抱きしめておく。
時折思い出したように、それほど煽情的でない触れかたであちこち撫でてみたり、頬を寄せてみたり。
彼女はただただ困惑した顔でそれを受け入れていた。
「……あ、の」
「……好き」
「……っ、まだ、そんなに話したことないのに……っ」
「時間なんて関係ない。それに俺にとっては、すごくすごくたくさん話してくれたんだ」
「……っ!?」
彼女はますます困惑の表情を浮かべる。
僕は彼女の頬に手を添えて、しっかりと目を見つめる。
「……最初はただ、綺麗な子が何ふらついてんだと思ってた。話してみたらどっか抜けてて心配になった」
彼女は少しだけ眉根を寄せた。
「もっと話してみたら、意外に楽しかったんだ」
「……い、意外に」
「そう。抜けてたと思ったらとんでもなく知識が深い時もある。かと思えばまた抜けてるとこが見つかる。忙しないと思っていたら、たまに爆弾発言をする。……新鮮で、楽しかったさ」
「ばくだ……し、新、鮮?」
「腹の探り合いのない会話は、久しぶりだった」
本当はこっちとしては探り合いそのものなんだが。
日常会話ばかりだった態なので、こういう印象じゃないと逆におかしいだろう。何せ彼女は本当に他愛もないことしか話してくれなかったのだから。
とどめに、僕のことをきっと彼女はホストか客引きかなにかだと思っているだろうから、怪し気な何かを演出しておく。それを流すために次を続ける。
「特にきみと酒の話をするのは、本当に楽しい時間だよ」
彼女はそれを聞いてまた少しぽかんとするが、すぐに小さく俯いた。けれど表情はどこか楽しげではある気がした。
「それ、私、話してもらってるばかりじゃないですか」
「きみは聞き上手だからね。あと気づいてないかもしれないけど、新しいカクテルを作る話になると意外に饒舌になる。見てて面白いし、参考にもなる」
ちょっと楽しそうだった彼女が途端にまた困り顔になった。けれど顔が赤くなっている。
いったん少し押してみよ
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