2.降谷さんの刻苦。
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僕の目元に触れてきた。
「……目が、綺麗だな、と、思って」
「……」
断じてしてやられたわけじゃない。おまけに彼女のことだから何も考えてないだけだ。
「きみから触れてくれるなんて、嬉しいなあ……」
「っ!?」
目を丸くして一瞬で手を引っこめた彼女を引き寄せて唇を重ねる。
「っ!? ……んー……!」
バカなことをしたのを思い知れ。今どういう状況かまるで考えてないだろう。
ふわふわと啄んで食んでは、わざと小さくリップ音を立てる。それを何度か繰り返しながら、僕は益体もないことを考えていた。
喋り方も意図的に普段の僕からは変えてある。
これは存外に重要なファクターなのかもしれない。
自分ではないものを演じているのが常に自覚できるから……『俺』ならやる、『僕』ならやらない、というのを、本当に『俺』ならやれる、というか……これはスイッチの切り替えに良さそうだ。
「っふ……んむ……んんん……っ!」
彼女は必死な様子で身を捩っているが、逃げ出されそうなほどじゃないというか、これは……こういう時の彼女は多分、僕に遠慮している。こんなことをされながら、思いっきり振りほどこうとして僕に痛みを与える可能性を恐れている。
そんな程度ではどこも痛まないのに。
……これも『多少近づいた相手』に対する彼女の絆されようなのだろうか。
本当に危うい人間だ。
ほんの少しの苛立ち紛れに彼女を引き寄せ、仰向けにしてその上に覆いかぶさるように位置取る。
「っ……!?」
こうすると、掛け布団は薄い一枚しか被っていなかったから彼女はあまりにも無防備になって、結果腕で自分を抱きしめるようにして彼女は縮こまった。
「……どういう状況か思い出した?」
呼吸も上がって顔も赤い彼女は悲壮な顔をしてはくはくと口を動かしている。言葉にはならないらしい。少しは己の愚かさを思い知ったようだ。
やがて目を逸らした彼女は不満そうな表情をする。
「……服、ください」
「いやだね」
「……!」
悲壮な顔で見上げて来る彼女に、僕はにこりと微笑む。……そして少し眉尻を下げてみせる。
「……先にシャワーを浴びよう」
彼女は少しぽかんとした。僕はふっと笑いかけた。そしてそのまま身を起こすと、彼女を横抱きに抱え上げる。
「……っえ、あ、ま、待って、待ってください、シャワーならおひとりで……!」
「…………身体、つらいだろ」
運びながらそう小さく言うと、彼女ははっとして、それから何も言わなくなった。
このまま直行ではどう考えてもマズイので水分補給をさせてから浴室に向かう。
恥ずかしそうだったり自分でやりたそ
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